イズモ・タケル
出雲(いずも)の国は歴史も古く、大和の国にも決して劣らない、誇り高い国でした。
ヤマト・タケルにとって出雲の国の主、イズモ・タケルはいつか戦わなければならない大敵でした。
クマソ・タケルを征伐したものの、大和をでる時にいた供の勇ましい兵(つわもの)も半分ほどになり、剣も度重なる戦でボロボロになってしまいました。
このままでは、イズモ・タケルを倒すことはできそうにもありません。
それに、出雲は立派な剣が作られているところですから、なおさらのことです。
ヤマト・タケルは「されど、イズモ・タケルに勝たねばならない・・・」とつぶやくのでした。
「そうだ、謀(はかりごと)を使おう・・・まず、イズモ・タケルを味方と思わせることだ・・・」
こう考えたヤマト・タケルは、さっそくイズモ・タケルの館を訪ねました。
館の美しいこと、豊かな稲の稔のことを誉めたたえました。
「オロチ退治のあった肥の川(ひのかわ)に案内してもらえないか・・・」「お望みとあれば・・・」
二人は肥の川にでかけました。その景色は、なるほど素晴らしいものでした。
ヤマト・タケルは言うのでした。
「このあたりで水浴びをしようではありませんか・・・・」
安心したイズモ・タケルは、一緒に汗を流しましたが、これが謀だったのです。
先に水から上がったヤマト・タケルは前もって用意していた木で作った剣をイズモ・タケルの剣と取り替えました。
そして、イズモ・タケルを待ちました。
やがて、自ら上がったイズモ・タケルに言いました。
「あなたは、出雲で一番の勇者。ひとつ、勝負をしようではありませんか」
イズモ・タケルは「私に勝てる者はあるものか・・・」と剣を抜こうとしました。ところが抜けません。
ヤマト・タケルは、イズモ・タケルをなんなくやっつけることができました。(no5117)