樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

鳥が教えてくれたテクノロジー

2021年03月18日 | 野鳥
蚊の針を応用して痛くない注射針が開発されたことをご存じでしょう。こうした自然界の生物をヒントにして生まれた技術を「生物模倣技術」と呼ぶそうです。鳥から生まれたものもいくつかあります。
例えば、新幹線の先頭の車体はカワセミの嘴を模倣したものですし、そのパンタグラフの騒音を抑えているのはフクロウの羽根の消音構造を応用しています。ちなみに、これを開発したのはバードウォッチャーで、日本野鳥の会京都支部の会員です。
家電メーカーのシャープは生物模倣技術の開発に積極的で、エアコン室外機のファンに3種類の鳥の翼を取り入れて、送風効率を20%向上させています。以下は、同社のウェブサイトにある図。



まず、アホウドリの翼を模倣してファンの円周部にできる渦を極小化。そして、ファンの後端をイヌワシの翼のようにすることで排出される渦を小さくし、次の羽根への衝突を抑制。さらに、アマツバメの翼の形状(厚み)を取り入れて空気を吸い込む力を向上させたそうです。
シャープはこうしたファンの構造を扇風機にも展開して風量を約50%向上させたり、ヘアドライヤーのファンの回転速度を高めてドライ時間を約50%短縮したりしています。
EUの航空機メーカー、エアバス社は2019年にアホウドリの翼を取り入れた飛行機の試験飛行に成功しています。はばたくことなく長距離を飛ぶアホウドリが、通常は翼を固定していながら突風が吹くと翼を柔軟に動かして風に乗っていることに着目し、飛行中に翼の先端を上下に曲げられるようにしたのです。これによって空気抵抗を減らし、燃費が向上するそうです。模型による試験飛行が以下の動画。



一方、研究機関として生物模倣技術に積極的に取り組んでいるのが東北大学大学院。そのサイトには、将来応用できそうな技術が190項目取り上げられていて、鳥に関するものが13項目あります。
「なるほど!」と思うのは、鳥の卵。他の鳥が嘴でつついても割れにくい強度がある一方、ヒナがふ化しやすいよう殻の内側からは割れやすい構造になっているのですが、これを応用すれば、地震や強風に強い建築物、外からの衝撃には強く内側からの衝撃には弱い車のフロントガラスが開発できるのです。
自然の仕組みは面白いですね。

コメント (2)
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