樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

バードウォッチングと人種差別

2021年03月11日 | 野鳥
昨年5月25日、アメリカのミネアポリスで黒人男性のジョージ・フロイドさんが警察の強引な拘束によって死亡し、それがきっかけになって「Black Lives Matter」運動が世界中に広がりました。その報道の陰に隠れて日本ではあまり知られていませんが、同じ日にニューヨークでバードウォッチングに関連する人種差別事件が発生しています。
セントラルパークで鳥を観察していた黒人男性が、リードなしで犬を遊ばせていた白人女性を注意したところ、逆ギレして食ってかかってきたので動画撮影すると、女性は警察に「アフリカ系アメリカ人の男が私の命を脅かしている」と通報しました。
翌日その動画がツイートされると、女性は謝罪しましたが、勤務先の投資会社は人種差別を理由に解雇。検事局は虚偽通報で起訴しました(その後取り下げ)。
一方、アメリカのバーダーや愛鳥団体、鳥類学者などの間では、ジョージ・フロイド事件が重なったこともあって大きな問題になり、5月31日から6月5日まで「Black Birders Week」というオンラインイベントが開催されました。
その目的は「バードウォッチングと自然科学のコミュニティに黒人が存在するという事実を認識させること」。そして、「黒人は歴史的に学術的な世界から除外されており、自然科学コミュニティ、特に野鳥観察者の間での視覚化や表現が不足しているため、自然を楽しむ能力に萎縮効果をもたらしている」と訴えています。後半の文意は、バードウォッチングを表現する映像に黒人が登場しないので、周囲が黒人の野鳥観察を奇異に感じてしまい、黒人自身も委縮するということのようです。
このイベントには全米オーデュボン協会、全米バードウォッチング協会などの愛鳥団体のほか、アメリカ生態学会、全米野生生物連盟、国立公園局などさまざまな団体が連携しました。特に、当事者の黒人男性がオーデュボン協会の理事であったことから、同協会は積極的にメッセージを発信。下は同協会のウェブサイトですが、「アウトドアでの多様性を促し、人種差別を撤廃します」と訴えています。写真の黒人女性はジョージアサザン大学で鳥を研究している大学院生。



こうした黒人差別は日本人にはあまり実感が湧きませんが、もしアジア人だったらどうだったでしょう?  20年以上前、仕事でニューヨークへ行った際、セントラルパークでバードウォッチングしたことがあるのでそんな想像をしました。
コメント (4)
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