樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

ナスカの鳥の絵を同定

2020年03月05日 | 野鳥
3年前、ナスカの地上絵に描かれた鳥の話を投稿しました。その後、北海道大学総合博物館、山形大学、山階鳥類研究所の研究グループがそれらの種類を同定するという面白いプロジェクトに取り組み、昨年6月に結果を発表しました。
このグループは、ナスカの鳥の地上絵16点を鳥類学の観点から調査。それぞれの絵に描かれている嘴や脚の指、尾羽の特徴を抽出し、現在ペルーに生息する鳥と比較しながら分析して、3点の地上絵を同定しました。
その一つが従来からハチドリとして知られている下の地上絵で、カギハシハチドリ類と特定されました。日本にはハチドリはいないので実感がありませんが、アマツバメ目ハチドリ科カギハシハチドリ亜科として分類されるハチドリです。



山階鳥類研究所のウェブサイトによると、「従来、ハチドリとのみ同定されていたが、ペルーに生息するハチドリ科で尾羽の中央が突出するのはカギハシハチドリ亜科のみである。カギハシハチドリ亜科は、アンデス山脈の北側あるいは東側の熱帯地方にしか生息しておらず、ナスカ台地には分布していない」とのこと。下はカギハシハチドリ類の1種Long-billed Hermit。



また、下の絵と別の1点はともにペリカンと同定されました。嘴が細くて長く、先端がカギ型に曲がっていること、頭部に冠羽があることなどがその根拠です。



北海道大学総合博物館の江田真毅准教授は、海鳥が海から運んだ水を山に落とし、水が川を流れてナスカ台地に至ったという民話がナスカ周辺に残っていることから、「海鳥のペリカンを描いたのは雨乞いが目的だったのではないか」と推測しています。
また、従来コンドル(下の絵)とかフラミンゴとされてきた地上絵はそうではないことが明らかになったものの、残りの13点の地上絵とともに具体的に特定するには至っていません。



山階鳥類研究所は今後の展望について次のように語っています。「ナスカ台地に生息するアンデスコンドルなどの鳥ではなく、外来の鳥が描かれた背景には、地上絵の描かれた目的が密接に関わっていると研究グループは考えています。今後、同じ時代の土器に描かれた図像や、遺跡から出土する鳥類遺体などを調査して、その結果を比較・統合することで、制作の目的などの謎に迫ることができると期待しています」。いつの日か、その謎が解明され、16点すべての鳥が同定されることを期待しましょう。
(画像はいずれもPublic Domain)
コメント (4)
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