樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

バードストライク

2018年12月20日 | 野鳥
野鳥保護の世界で「バードストライク」といえば、風力発電の風車に鳥が巻き込まれる事故を指しますが、ここでは飛行機に衝突する鳥の話。
2009年1月、USエアウェイズのエアバスが乗員乗客155名を乗せてニューヨークのラガーディア空港を離陸しました。その2分後、高度3200フィートでカナダガンの群れに衝突。両方のエンジンが停止したため高度が維持できず、機長は市街地への墜落を避けてハドソン川に不時着させます。
結果的に全員が無事だったことから「ハドソン川の奇跡」と呼ばれ、後にクリント・イーストウッド監督、トム・ハンクス主演で映画にもなりました。



こうした深刻な事故が発生していないのでほとんど知られていませんが、日本でも飛行機によるバードストライクは数多く発生しています。国交省が発表した「バードストライクデータ」によると、2016年の鳥衝突件数は1626。
空港別に離着陸1万回当りの衝突件数をみると、佐賀空港31.5件、出雲空港21.7件、北九州空港20.8件となっています。佐賀空港が圧倒的に多いのは、シギ・チドリ類が集結する有明海に面しているからではないでしょうか。月別にみても、8月190件、9月179件、7月175件、10月156件と渡りの時期に重なっています。


画像はPublic Domain

鳥種別では、ツバメ143、トビ85、ヒバリ59、チドリ54、カモメ26、チョウゲンボウ17などとなっていますが、機長や空港管理者による報告なので同定の精度に疑問があり、半数以上の905件が鳥種不明です。
バードストライクによって鳥は命を落とすことになりますが、飛行機にもダメージがあります。2016年は、引き返しや目的地変更など飛行ルートの変更が22件、離陸中止15件、航空機の損傷40件。
こうしたトラブルを防ぐため、バードパトロールを実施している空港もあります。その効果は大きく、離着陸1万回当りの件数で比較すると、バードパトロールを導入していない空港が10.02であるのに対し、導入している空港では4.03と半分以下になっています。野鳥保護団体の会員としては全ての空港でバードパトロールを導入していただきたいものです。
なお、日本でもバードストライクをテーマにした映画が製作されています。綾瀬はるか主演の『ハッピーフライト』。上記の『ハドソン川の奇跡』と違ってコメディタッチですが、航空業界の内幕が分かってなかなか楽しめます。

コメント (2)
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