樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

ナース・ログ

2014年05月19日 | 森林保護
コピーライターになったころ、多様なレトリックを習得するため、開高健の文章をノートに書き写しました。サントリーのコピーライターから転身したこの作家のレトリックは、「饒舌体」と呼ばれるほど華麗だったからです。著作もほとんど読みました。
私淑するその先生が森の倒木について語っています。執筆ではなく、インタビューの書き起こしなので、饒舌体は影をひそめていますが…。
風倒木が倒れて倒れっぱなしになっている。これがムダなように見えていて、実に貴重な資源なんであって、そこに苔が生える、微生物が繁殖する、バクテリアが繁殖する、土を豊かにする、小虫がやってくる、その小虫を捕まえるためにネズミやなんかがやってくる、そのネズミを食べるためにまたワシやなんかの鳥もやってくる、森にお湿りを与える、乾かない、そのことが河を豊かにする、ともう全てがつながりあっている。
だから、あの風倒木のことを、森を看護しているんだ、看護婦の役割をしているんだというので「ナース・ログ」というんですけれども、自然に無駄なものは何もないという一つの例なんです。



栃の森のナース・ログ

先生のお言葉ですが、「看護婦の役割」というのがしっくりこないので、私なりに調べてみました。「Nurse log」をネットで検索すると、英語版のWikipediaに説明があり、やはりニュアンスが違います。
英和辞典を開くと、nurseには「看護」「看護婦」とは別に、「育児」「保母」という意味があり、動詞として「授乳する」「養育する」という意味もあります。
倒木が次世代の生物に授乳し、養育するという見立て…。「Nurse log」は「森を育てる木」という意味なんですね。なかなか含蓄のある言葉です。
天国にいらっしゃる開高先生! 僭越ながら弟子が修正しておきましたよ~
コメント (4)
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