樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

隣の国の家具

2010年01月21日 | 木と文化
先月、宇治の木工作家ichiさんのブログで知った朝鮮の家具展を見るため、京都市内にある高麗美術館へ行ってきました。


(高麗美術館)

最初に目を捉えたのは、ケヤキ材を使って角を金具で補強した櫃(ぐぇ)と呼ばれる収納ケース。その存在感やどっしりとした風格は、同じくケヤキを使った日本の仙台箪笥に似ていて、ルーツはここにあるのではないかと思いました。
館内は撮影禁止なので、絵葉書を撮影した画像でご紹介します。


(仙台箪笥のような風格を備えたケヤキ製の櫃)

もう一つは、黒柿貼りの引き出し。本体をケヤキやマツで作り、表面に黒柿の薄板を貼って装飾しています。黒柿は日本の茶道具など趣味性の強い木工品に使われますが、気候や土壌、微生物などの条件が揃った時に生まれる黒い縞模様のカキノキ。極めて珍しい木材です。
絵葉書がなかったのでポスターの一部を撮影した画像ですが、縞模様が左右対称になっているのが分かると思います。


(黒柿貼りの二層の引き出し)

朝鮮半島は寒いので防寒のために部屋が小さく、しかも床に直に座る生活なので、家具は低く、横広がりの傾向があるそうです。また、床暖房であるオンドルが普及しているため、その熱で家具や収納物が傷まないように脚がついているとのこと。
主な木材は、予想どおりマツ。ケヤキやキリも使い、黒柿や竹で表面を装飾するというのが一つのパターンのようです。
当時の朝鮮社会は儒教思想に基づいて男女が厳格に区分されており、男性用の家具は質実剛健で女性用の家具は逆に華美。下の家具は女性用の引き出しですが、牛の角を薄く削って絵付けしたタイルを貼って装飾しています。この「華角」という技法は朝鮮独自のものらしいです。


(華角の三層の女性用引き出し)

すぐ隣の国ですが、気候や生活スタイル、文化が少し違うだけで、日本と全く異なる家具が生まれるんですね。
コメント (4)
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