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樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

黒木鳥居

2010年08月05日 | 木と宗教
故郷の丹後には鬼退治伝説で知られる大江山があり、その山中に元伊勢神社という古い神社があります。そこに全国でも珍しい黒木鳥居があると聞いて、帰省の途中に寄ってきました。
黒木鳥居とは樹皮をつけたままの鳥居。現在は石やコンクリート製の鳥居が多いですが、木製の場合でも普通は樹皮をはがした丸太を使います。しかし、元伊勢神社は昔から樹皮つきの鳥居。現地で確かめると、樹種はスギでした。


元伊勢神社(内宮)の黒木鳥居

黒木鳥居としては京都・嵐山の野宮(ののみや)神社の方が有名かも知れません。ここの鳥居はクヌギ製。以前は3年ごとに建て替えていたものの、木材が入手困難になったため一時はコンクリートの擬木にしていたようです。しかし、四国のある企業が剣山からクヌギを切り出して寄進し、本来の黒木鳥居が復活しました。


野宮神社の黒木鳥居

元伊勢神社のスギはご神木でもあるので納得できるとして、野宮神社の鳥居はなぜクヌギなのか? そもそもなぜ皮付きの鳥居なのか? よく分かりません。そのヒントになるかどうか、万葉集に黒木を歌った聖武天皇の和歌があります。
  あをによし 奈良の山なる 黒木もち 
    造れる室(むろ)は 座(ま)せど飽かぬかも
天皇が住む宮殿は皮をはいだ木で造られていますが、当時の庶民の家は皮がついたままの木で造られていたそうで、ある時そういう庶民の家を訪れた天皇が、「皮付きの木で造った家はリラックスできていいな~」と詠んだ歌だそうです。皮をはいだ木の家はフォーマルで堅苦しいというイメージがあったのでしょうか。


蝋で固めたような防腐処理が施してあります

土曜日の嵐山、しかも縁結びの神社とあって、若い女性の熱気でムンムンする境内を、鳥居を撮影するために場違いなおじさんが一人ウロウロしてしまいました(笑)。
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風変わりな絵馬

2010年06月07日 | 木と宗教
樹木や建築物を見にあちこちの神社に行くと、時々おもしろい絵馬に出会います。今回はそうしたユニークな絵馬特集です。
まずは、伏見稲荷大社の奥の院の絵馬。さすがお稲荷さんの総元締め、絵馬までキツネ型です。商売繁盛で参拝する人が多い神社ですが、この絵馬は願い事なら何でもOKのようで、若い参拝者がおもしろがってキツネの顔を描いています。私にはイヌに見えますが…(笑)。
ちなみに、境内にある数件の食事処ではきつねうどんと稲荷寿司が必ずメニューに入っています。





以前ご紹介しましたが、京都市の中心部にある御金(みかね)神社の絵馬はイチョウ型。理由は単純、ご神木がイチョウだから。この神社は名前の通り金運祈願で知られ、鳥居も金色です。ひょっとすると、イチョウの黄葉を黄金色に例えた絵馬かも知れません。



豊臣秀吉を祀った豊国神社では瓢箪型の絵馬を発見。立身出世や開運祈願と思いきや、縁結びだそうです。案内板によると、秀吉とねねは当時としては珍しく恋愛結婚で結ばれたから…。女性観光客目当てのこじつけっぽいな~(笑)。




奉納場所は千成瓢箪状態

お寺の場合も絵馬と言うのかどうか、大阪の一心寺には断酒祈願のしゃもじの絵馬があります。言い伝えによると、本多忠朝という武将が大阪夏の陣で前夜の深酒がたたって敵に打たれ、死ぬ間際に酒癖を悔い「酒のために身を誤る者を助けたい」と誓ったので、その墓に酒に苦しむ当人や家族が参拝するようになったとか。
なぜしゃもじなのか分かりませんが、お墓のまわりにたくさんぶら下げてありました。私も酒飲みですが、今のところお世話にはならなくていいようです。



最もインパクトがある絵馬は、奈良の春日大社の末社・夫婦大国社(めおとだいこくしゃ)のハート型。日本で唯一、大国主命(おおくにぬしのみこと)と須勢理姫命(すせりひめのみこと)の夫婦の祭神を祀った神社で、縁結びにご利益があるそうです。
色も濃いピンクで、たくさんの絵馬が奉納されている一体は異様に熱っぽい雰囲気でした(笑)。





絵馬の材質はもともとは国産のヒノキやモミだったはずですが、現在はほとんどが輸入材。アメリカ産のモミ、スプルース、中国産のシロマツ、ロシア産のエゾマツなどのようです。木目がそろって美しいこと、木肌が白くて願い事が書きやすいことが絵馬の木材の条件でしょう。
こうやって風変わりな絵馬を並べると、神社側の“商売繁盛”の戦略が見え隠れしたり、それを承知の上で神頼みする人間のせつなさが偲ばれたり、なかなか感慨深いです。
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座禅

2010年06月03日 | 木と宗教
木製品を見ると何でも気になる私は、テレビで座禅シーンを見ていて、「肩を叩くあの棒にはどんな意味や由来があるのだろう?」と疑問になって調べてみました。
あの棒は「警策」と書き、曹洞宗では「きょうさく」、臨済宗では「けいさく」と読むそうです。坐禅の最中に睡魔に襲われたり、逆に非常に充実した坐禅をしている者に、励ましの気持ちを込めて、文殊菩薩に成り代わって叩くものだそうです。
材質は宗派や寺院によって違うようですが、あるお寺では夏は薄着の人を叩くのでヒノキ、冬は厚着の人を叩くのでカシを使うとか。カシは硬いので、薄着では痛いからでしょう。また、叩く回数も夏は両肩を2回ずつ、冬は4回ずつと決めているそうです。ヒノキやカシのほかナラやクリの警策もあるようです。



以上は一般人対象の話で、お坊さんが修業するときはそんな生易しいものではなく、座禅も長時間に及び、警策を激しく打ちつけるので何本も折れるそうです。(お~恐っ!)
上の写真は宇治で最も大きなお寺、万福寺の座禅会。太っ腹な宇治市観光課のフリー画像サイトからいただきました。
巡回するお坊さんが警策を体の中央に立てるのは曹洞宗、右肩に担ぐのは臨済宗だそうですが、この写真では左肩に担いでいます。万福寺は黄檗(おうばく)宗の総本山ですから、この宗派独特なのでしょう。
私は座禅の経験はありませんが、叩く部分は平たく、骨を避けて筋肉を狙うので、打たれた後は血の巡りが良くなって清々しい気分になるそうです。
それでも、カシやクリの警策は痛そうだから、できればヒノキにして欲しいな~(笑)。
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護摩木

2010年02月08日 | 木と宗教
先週の2月3日、近くにある龍神総宮社という新興宗教の神社で節分祭が行われました。私は宗教心ほとんどゼロですが、親戚の代理で厄除けの護摩祈願をするためと、無料で振る舞われる巻寿司やイワシの塩焼きに目がくらんで(笑)参拝してきました。
信者や一般市民が供えた数万本の護摩木が井桁に組まれ、祭主が祈祷する中、勢いよく燃え上ります。


(地面に掘られた大きな炉で燃える護摩木)

木材マニアとしては以前からこの護摩木が気になっていて、いろいろ調べたことがあります。まず樹種は、国産材ではヒノキ。私の推測ですが、表面が艶やかで美しく、香りも良く、間伐材としての用途に向いているから護摩木に使われるのでしょう。
下の写真は、近所の宇治神社の護摩木。匂いを嗅ぐと、甘みのあるヒノキ特有の香りがしました。



ヒノキ製はやや高価なためか、一般的にはスプルース製が使われるようです。北米のマツ科トウヒ属の樹木で、肌が白くて文字が書きやすく、よく燃えるので護摩木に最適だとか。
下の写真は、立木観音(安養寺)に参拝したときのもの。外見だけではヒノキと区別できませんが、ほぼ無臭だったのでスプルースでしょう。



ところで、1枚目は神社の護摩木、2枚目は寺院の護摩木。「神道でも仏教でも同じことをするのはなぜだろう?」と疑問になって少し調べました。もともと密教系(真言宗・天台宗)の修法だった護摩祈願が神仏融合で神道に入り込んだ後、明治の神仏分離で強制的に改組されたために、護摩祈願の伝統を持つ神社が残ったという経緯のようです。


(有名人による豆まき)

ちなみに、参拝した節分祭では毎年有名人が豆まきをします。今年は相撲界から貴乃花親方、旭天鵬、黒海、芸能界から中条きよし、左とん平、佐藤我次郎、お笑い界から桂きん枝、太平サブローなど13人が参加。
また、市長や国会議員、府会議員、商工会議所会頭など宇治の政財界の有力者も裃姿で豆をまいていました(政治家がこういう宗教行事に参加していいのかな?)。おそらく宇治で最も多くの著名人が集まるイベントです。
貴乃花親方はちょうど2日前の相撲協会の理事選挙で注目されていたため、会場には東京のテレビ局や大手新聞社の取材クルーが詰め掛けていました。


(貴乃花親方には大きな拍手が…)

他の著名人が豆を投げる中、親方はステージの前の人々に直接手渡ししていました。優しい人柄なんでしょうね。

PS
guitarbirdさんのリクエスト(?)にお応えして、巻寿司と鰯の写真を追加します。巻寿司はお昼としてその場で、鰯の塩焼きは持ち帰って夕飯に妻と一緒にいただきました。
鰯の写真がボケているのは、炭火焼きの煙が充満しているためです。





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扁額

2010年01月18日 | 木と宗教
神社の鳥居やお寺の山門に大きな木製の看板が掲げてあります。これを扁額(へんがく)と呼ぶそうです。以前ご紹介した老舗の看板と同じく材はケヤキが中心。たまにヒノキも使われるようです。
下の写真は、京都市内にある豊国(とよくに)神社の鳥居の扁額。この神社は豊臣秀吉の遺命によって慶長4年(1599)に創建されました。この額が製作されたのは明治時代ですが、書は創建当時の後陽成天皇のもの。



唐門にはそのオリジナルが掲げてあります。こちらの扁額は創建当初のもの。この書を写し取って鳥居の扁額を彫り上げたわけです。
ちなみに、この唐門は伏見城の門を移築したもので国宝。伏見城→二条城→南禅寺→豊国神社と3回も移築されたそうです。


(豊国神社の唐門)

(唐門に掲げられたオリジナルの扁額)

下の写真は東福寺の山門。これも国宝だけあって、大きいだけでなく、どっしりと重厚感のある造り。ここにも扁額が掲げてあります。



こちらの書は、室町幕府4代将軍・足利義持が1400年頃に揮毫したもの。本来は「妙雲閣」と書くべきところ、禅の修業に女性は障害になるという理由から、女ヘンを「玄」と書き換えたそうです。



書としては子どもっぽく、今で言うウマヘタでしょうか。私も子どもみたいな字しか書けないので、読めない達筆よりも親近感が湧きます。
この扁額専門の職人が現在は京都に一人しかいないという話題を地元のNHKが放送していました。調べてみると、他の地方では木彫作家や欄間の職人さんが注文に応えて作っているようです。
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木に宿る仏

2009年12月17日 | 木と宗教
先月、友人から招待券をいただいて「円空・木喰展」を観てきました。木喰(もくじき)は昨年の春に別の会場で観て ご紹介もしました が、円空は初めて。
木喰と同じように、民衆のために仏像を彫りながら全国を旅した人物で、生涯に12万体の仏像を彫ったと言われ、5000体以上が現存するそうです。


(ポスターの上が円空、下が木喰の仏像)

木喰と同じような仏像を想像していましたが、実際に観てびっくり。自由奔放というか、前衛的というか、「300年以上も昔の日本にこんなとんがった彫刻があったのか!」と衝撃を受けました。
例えば、1枚の木の表面と裏面に違う像を彫ったリバーシブルの仏像や、下の写真のように樹皮がついたままの幹に目や口を刻んだ仏像もあります。その飛躍した着想には何度ものけ反りそうになりました。(撮影禁止なので図書館で借りた本の写真を撮影してご紹介します)


(1674年作の御法神像、91.4cm。まるでモダンアート)

有名な仏師が彫る仏像はヒノキかクスノキと決まっていますが、円空は木の種類を選ばず、しかも朽ちた木や曲がった木、切り株まで使っています。「すべての木には仏が宿っている」という考えがあったからだそうです。


(1674年作の観音像。58.7cm)

上の写真のように、木の生地をそのまま生かした仏像もあります。下の写真の不動明王像は、頭のうしろの木目をそのまま炎として表現しています。こういう彫り方を「生成り」と呼ぶそうですが、むしろ「木成り」と書いた方が分かりやすいですね。


(1680年作の不動明王立像。88.5cm)

木喰は「微笑仏」と呼ばれるように柔和な表情が特徴ですが、円空はこの自由奔放さが魅力なんでしょう。仏像には無知な私ですが、円空のパワーには圧倒されました。
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仏像とガンダム

2009年12月07日 | 木と宗教
大阪の百貨店で開催された仏像の展示販売会に行ってきました。と言っても、目的は仏像ではなく、客寄せに展示されている木彫りのガンダム。
今年の春、放送30周年を記念して東京のお台場に等身大(18m)のガンダムが建てられたそうで、40才前後の男性には懐かしいでしょう。木彫りのガンダムはその100分の1の20cmくらいですが、仏師がガンダムを彫ったというのが面白い。


(木彫りのガンダム)

版権をクリアするためにディテールも原作に忠実に仕上げたそうです。値段は意外に安く、50,400円。材はダンボク。初めて聞く名前なので調べたら、シベリアで産出されるポプラだとか。
会場には他にも懐かしいキャラクターが並んでいました。ゴジラやキングギドラは恐竜らしい皮膚や歯など細かい部分も丁寧に彫ってあります。


(精巧に彫られたゴジラ)

(彫るのが難しそうなキングギドラ)

ゴジラやキングギドラは記憶にありませんが、はっきりと映画を見た覚えがあるモスラも展示してありました。1961年に封切られたそうですから、約50年前。双子の歌手のザ・ピーナッツが小人に扮して「♪モスラ~や、ドンガッタ~」と意味不明の歌を歌っていましたっけ。


(モスラは蛹も彫ってあります)

この3怪獣はいずれもケヤキ材で、値段は315,000円。細工が細かい分、ガンダムよりも高いのでしょうね。
こういう懐かしいキャラクターを仏像と一緒に展示するのはなぜでしょう。多分、40代以上の人たちがそろそろ仏壇を作ってご先祖を祀る時期になったからではないでしょうか。仏師自身にとっても懐かしいモチーフだからかも知れません。



本来の展示目的の仏像も紹介しておきます。上の聖観音菩薩像はツゲ材で168,000円。怪獣より少し小さい程度ですが、値段は半分です。怪獣は手間がかかるのと版権代が含まれているからでしょうか。
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菩提樹

2009年08月13日 | 木と宗教
「ボダイジュ」と聞いて何を連想しますか?
「♪泉に添いて 茂る菩提樹…」というシューベルトの歌曲を思い出す人もいるでしょう。ここで歌われているボダイジュは、ドイツ語でリンデンバウム、植物学上ではセイヨウシナノキ。ヨーロッパに自生する落葉広葉樹です。

              
           (万博公園で撮影したセイヨウシナノキ)
       
                   (セイヨウシナノキの葉)

「お釈迦さんが悟りを開いた樹」と思う人もあるでしょう。日本のお寺にボダイジュが植えてあるのはこのためです。リンデンバウムと同じシナノキ科の仲間で、植物学上の名前もそのまま「ボダイジュ」。日本の自生種ではなく、中国から移入された樹木です。

       
               (近くのお寺に植えてあるボダイジュ)
              
                  (ボダイジュの葉と実)

ところが、正確に言うとお釈迦さんが悟りを開いたのはインドボダイジュ。似たような名前ですが、こちらはクワ科。仏教の世界では神聖な樹ですが、熱帯でしか生育しないため、仏教が中国に伝わった段階で葉の形が似ているシナノキ科のボダイジュに代わり、そのまま日本に移入されたようです。
昨年、龍谷大学のセミナーに参加した際、そのインドボダイジュを見つけました。さすが仏教系の大学。温室ではなく屋外でしたが、立派に育っていました。

              
             (龍谷大学にあるインドボダイジュ)
       
          (インドボダイジュの葉。シナノキの葉に似ている?)

お釈迦さんは2500年ほど前、ブッダガヤという村のこの樹の下で悟りを開いたわけです。7世紀にその場所を訪ねた三蔵法師は、「樹高は12~15m。まだ青々としており、人々が香料入りの水やミルクを根元に注いでいる」と記しているそうです。
ブッダガヤには現在もその子孫のインドボダイジュがあり、世界中から巡礼者が訪れるとか。龍谷大学には「ブッダガヤ原産」と明記した看板がありましたから、同じ子孫かも知れません。
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松が嫌いな神様

2009年08月10日 | 木と宗教
神戸の繁華街・三ノ宮から徒歩5分くらいの場所に生田神社があります。タカラジェンヌや関西の有名人が挙式する神社として有名で、最近では藤原紀香と陣内智則の結婚式で全国に知られました。

       
                 (生田神社の社殿)

この生田神社では松がタブーになっています。1200年前、生田川が氾濫した際に境内の松が倒れて社殿が壊れ、「松は水に弱いので、今後は境内では松を忌むように」という神のお告げがあったからだそうです。現在も境内には松を1本も植えず、お正月の門松も杉を代用しているとか。
古来、松は神の寄り代(天から降りてくる階段みたいなもの)と考えられ、ほとんどの神社には松が植えられています。能舞台の背景に松が描かれているのもこのためです。その松を嫌う神様というのは珍しいのではないでしょうか。

       
              (「生田の森」にあるご神木はクスノキ)

実際に歩き回ってチェックしてきましたが、確かに境内にも裏手の「生田の森」にもマツはありません。多いのはクスノキ、ツバキ、スギ、竹など。
ところが、ヒマラヤスギが植えてあるのを私は見逃しませんでした。本殿の近くに3本、松尾神社の分社に6本、駐車場の隅に1本、けっこう大きな樹がありました。
ヒマラヤスギは名前を見ればスギ科のようですが、植物学的にはマツ科。日本の自生種ではありませんが、この神様が大嫌いなマツの親戚です。

       
               (駐車場の隅のヒマラヤスギ)

アカマツやクロマツでなければOKということでしょうか。それにしても、松をタブー視する神社があるというのは、私にはとても興味深いことでした。
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七夕伝説

2009年07月06日 | 木と宗教
宇治市と大阪市の中間にある交野(かたの)市は、関西では七夕伝説で有名です。天野川という川が流れ、星田や星が丘などの地名が残り、織姫を祭る機物(はたもの)神社があります。
この神社では毎年7月6日~7日に七夕祭りが行われ、境内に立てられた約40本の竹に多くの人々が短冊を結びつけます。

       
        (機物神社の参道には七夕祭りの幟が立っていました)

竹は当ブログの守備範囲ではないのでパスしますが、この神社ではタラヨウの葉に願いごとを書き記す風習があるというので見てきました。
以前ご紹介しましたが、昔タラヨウの葉の裏に文字を書いたことから「葉書」と呼ばれ、現在も「郵便局の木」に指定されています。先が尖ったもので書くと、しばらく後にその部分だけ黒く変色するのです。

       
                  (機物神社の本殿)

本殿の左右にタラヨウが1本ずつ植えてあり、人の手が届く範囲の葉の裏にはいろんな願いごとが書き記してあります。中には「仕事が早く見つかるように」という世相を映す願いもありました。
タラヨウを絵馬がわりにして願いごとを書く神社というのは珍しいのではないでしょうか。私は初めて知りました。

       
       (タラヨウの葉の裏にはいろんな願いごとが記されています)

もう一つ驚いたのは、両方のタラヨウの横にカジノキが植えてあったこと。カジノキも昔は葉の裏に墨で文字を書いたと言われています。試したことはないですが、細かい毛が密生してビロードのようになっているので字が書けるそうです。
タラヨウといいカジノキといい、葉に文字が書ける木が本殿の左右に植えてあるというのは何か意味があるはずです。

       
                  (カジノキの葉)

帰って調べたら、昔は七夕にはサトイモの葉にたまった夜露で墨をすってカジノキの葉に願いごとを書いて供えたそうです。公家の末裔・冷泉家では現在も七夕の日に歌を詠んでカジノキの葉に書き記すそうです。
今はカラフルな短冊に願いごとを書きますが、紙が貴重だった昔はカジノキやタラヨウの葉に書いて竹に飾ったのでしょう。想像するだけで風情がありますね。
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