こう家の庭にやってきたのは東京で地下鉄サリン事件が起きたころだから、かれこれ20年たつ。あの時の裁判は今も続いているというから罪の重さを感じながら被害にあわれた方の心中を察する。
私の名前はツゲ。庭師は「これは数十年ものです」と主に説明しながらの庭に植えた。主は自分と同年配という偶然を喜んでくれた。それから毎年、主は剪定と言わず枝切りと言いながら、年1度、剪定用の鋏で刈ってくれる。
今年も、各段とも葉や枝が茂り重く、風の通りも悪く梅雨と合わせ鬱陶しい樹形になってる。先日から蜂が巣を作ろうとしてる。そんな私を見上げる主の顔から枝切りの近いことを予想していた。照れば夏日のような気温予想の日、仕事着の主が枝切りの準備を始める。昨年、剪定中にケガされた元上司のこともあり、今年も脚立の立て方など気を使っている。
今年はどうしたことか、丸裸にちかい枝切りになった。軽く涼しく気持ちよくなったものの、少々の違和感を感じている。何か大きな心境の変化でもあったのだろうか。上から2段目の枝が1本、先日のこと枯れて折れ、歯抜けのような樹形になったばかりで、大胆な刈り込みとあわせ少々面喰っている。さて、これで夏が越せるのやら。この庭に移ってからプロによる剪定は、まだない。