アフリカの草原をチータやライオン、ヒョウなどが食料とすべき獲物を追う。追われる小さな動物が逃げ延びると何かほっとし、倒されればこれが自然の掟、弱肉強食の世界と気の毒に思いながらも差し伸べる術はないと観念する。映像で見るこれらの一瞬は凄惨に感じる。しかし、人間も命を保つため、形こそ異なるが生あるものからその糧を得ている。
雨こそ降らないが、梅雨特有の蒸し暑い日、プランターに植えたキュウリの初収穫をして次のなり具合を観察していた。そこで小さな生きものの獲物の捕獲に出くわした。緑は緑でも草原ならぬキュウリの葉の上。小さな蜂(名前は分からない)が、体調は倍近い細長い虫をくわているとこに出くわした。いつからそうなっているのか分からないがすぐに手のひらサイズのデジカメを持ち出す。
虫は尾の方をくわえられている。蜂の動きは虫を持ち去ろうとするのか何度も羽ばたきをするが容易ではない。曲げたり延ばしたりと試みているが虫の抵抗は続く。虫の頭部に短い足が6本ある。これでギザギザ感のあるキュウリの葉のにしがみついている、ように見える。頑張れと応援する。蜂は飛び立つ試みを続ける。観察し始めて10分くらい経ったころ、虫の抵抗が終わったのか、蜂は獲物をぶらーんとぶら下げ、高く舞い上がっていった。
カマキリの捕食は撮ったことはあるが、蜂が虫を捕ることを知った。大草原とキュウリの葉、草原を走る猛獣、小さな虫の抵抗を時間をかけて抑える蜂、違いはあるものの生存するためのその営みは同じだった。弱者の犠牲の上に強者が栄える世界は食の世界だけであってほしい。