日々のことを徒然に

地域や仲間とのふれあいの中で何かを発信出来るよう学びます

火伏せの稲荷

2012年09月28日 | 回想
           

 近くにあるお稲荷さんは「町内が大火で甚大な被害を受けたあと火伏せ」として祀られたと聞かされたいた。社はこじんまりしていたが、その背にある御幣をしめた楠の大木は神霊が宿っても不思議ではないと心底思わせた。根周りは大人数人が手を広げるほどだった。がき遊びするときも、社のそばは静かに通り抜けていた。

 50歳になるころ「稲荷さんの世話人の一人になって手伝ってくれ」世話人会の長老から声を掛けられた。近くなのでお参りもしているし、式年祭では寄付をさせてもらっていた。寄付すると名前を染め抜いた幟を立ててもらえ、若いときには一人前になったような気になったりした。お世話になる町内のことでもあり、世話方の下働きとして加わった。

 社周辺の掃除、竹笹の切り出し、式年祭の準備、お接待など加わってみるとしきたりがあり、始めのころは戸惑いながら年配者の話に加わっていた。何年か過ぎたある年「あんたが会で一番若いから、引き継ぐことをいろいろ教えておく」と社の中へ初めて入れられた。そのときはお供え物についての話を緊張して聞いた記憶がある。何年かするうち、祭りの大方の流れは覚えた。

 しかし、下働きを始めて6~7数年過ぎたころ引越しでその町を去ることになった。いろいろ教示いただいた方々に感謝とお礼をいい、世話人を辞した。それから何年かしてそばを通りかかった。楠は朽ちたのか切り倒されたのかその姿はなくなっていた。昔ながらの社が寂しそうに思えた。鈴を鳴らし手を合わせた。
 
 散歩の途中に化粧直しされたお稲荷さんがある。そのそばを通るとあの小さな社を思い出す。
コメント
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