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吉香公園の紅葉谷、名前のとおり「モミジ」で知られる名所。厳島にも同じ名前の公園がありよく知られている。その広さは厳島に譲るとしても美しさは一歩も引かなぬいいところ。季節には多くの人が訪れ賑わう。山裾の坂道に並ぶモミジの並木、梢が色変わりし始めた木もあるが化粧はこれから、今は地元のウオーカーが通るくらい。
そんな静かな坂道に突然「まあ可愛い~」という若い女性の声がこだました。振り返ると数名がカメラを向けている。向けられているのは「洞泉寺」前に立っている赤い帽子を被った子どもの地蔵さん。初めて見る人は素直で優しい顔立ちに引かれ「可愛い」と思う。
よく見ると、引き締まった口元には一念を貫き通す力強さを感じるが、まあるい顔と優しく閉じた目がそれを包み込んでいる。目は閉じられているがその瞳はじっと世間を見つめているだろう。
洞泉寺は吉川広家が、安芸大朝新庄から1603年ここに移建、以後、岩国藩の菩提寺として寺領60石を与えられた。寺の門近くに、樹齢300年以上という臥竜梅がある、といえば寺を思い出される人も多いだろう。本尊の釈迦如来形坐像は県指定の文化財となっている。
動ずることもなさそうに撮ってもらっていたお地蔵さん、そのまあるい顔に少し笑みを感じたのは撮る人らの若さに少しあてられたのだろうか。