「ソメイヨシノの苗木は接木から始まる。接木では芯継ぎが難しい。樹齢を重ねるとやがて幹は空洞となる。そんなことからソメイヨシノの樹齢は60年、いや80年と諸説ある」と物識りな知人の話。そうであれば生い立ちから空洞となる宿命を背負っていることになる。
その数3千本といわれる錦帯橋と吉香公園周辺のソメイヨシノ、空洞どころか皮だけになった老木は数え切れないほど目にしている。しかし、老桜も春がくれば咲く。その咲き方は、若木の勢いは感じないが落ち着いた上品な自然美を見せる。
この吉香公園に諸説の樹齢を越える老木がある。その樹齢は今年126歳。それは確かな記録と残されていた写真から分かった、と説明版が立てられた。この老桜も含めて、桜は来る春に備えて、そろそろ葉を紅くしやがて散らし、寒風に耐えることになる。
空洞になる、その宿命を背負いながらも生きている姿に尊さを感じる。外見だけで「中身がない、内容がない」など判断してはならない、そんなことを教える教本ならぬ教木かもしれない。
錦帯橋上流の錦城橋を渡った付近に、空洞になった桜の幹の中を複数の竹が伸びている。名づけて「抱竹桜」、2度目の勤めをしているようでなんとも微笑ましい。