外崎肇一(とのさき けいいち)
栃木県出身。理学博士。明海大学歯学部教授。専門は感覚生理学。東京教育大学理学部生物学科卒業、同大学院理学研究科博士課程修了。聖マリアンナ医科大学生理学教室助手、アメリカ合衆国フロリダ州立大学生物学客員研究員、朝日大学歯学部教授、岐阜大学農学部獣医学科大学院教授などを経て、平成14年より現職 に就く。著書に『「におい」と「香り」の正体』(青春出版社)『がんは「におい」でわかる!』(光文社)がある。最近はがんのにおいに対しての研究を続けており、がん探知犬マリーンを使ってにおい成分の割り出しを目指している。
世の中にはさまざまなにおいが存在します。食欲をそそるにおいやうっとりするような草花のにおい、鼻をつまみたくなるようなゴミのにおいなど……。例を挙げていけば切りがありませんが、私たちの生活に欠かせないにおいに対する感覚は、一体どういうものなのでしょう。
「人間の感覚器は、目、耳、鼻、舌、皮膚などがあります。そのような感覚器の興奮が神経を伝わっていき、多くはまずは脳の一部の視床に入って統合された結果が さらに上位の 脳に伝えられていきます。ところがにおいのきゅう覚は視床を経由せずに、直接脳に伝えられるのです。においを嗅(か)いだことで一瞬にして記憶がパッとよみがえるというような感覚を経験されたことがある人もいると思いますが、これは、ほかの感覚と違ってにおいがダイレクトに脳に伝わるからなのです」。
視床を経由しないにおいの感覚は、大脳の本能的なところに直接作用します。目や耳に比べると、軽視されているきゅう覚ですが、人間にとっては重要な感覚といえます。しかし、きゅう覚にはまだ多くの謎が残っています。
「医学系のどんな専門書でも目や耳の項目にはたいがい20ページの記述があります。ところが鼻になると、どんなに詳しい専門 書でも2~3ページぐらいしか書かれていません。要するに、器官そのもののことがまだあまり分かっていないのです。数年前に、においを研究していた人が ノーベル賞を取りましたが、それはにおいの受容体が百種類ほどあることが分かっただけで、その百種類ある受容体とにおいは具体的にどのように関連するものなのか、どう違うのかということは分かっていないのです」。
きゅう覚は悪臭に対しても慣れやすい
人体の中ではまだ解明されていないことが多いきゅう覚。これは経験や学習による面が大きく作用しているせいでもあるようです。"いいにおい"と"いやなにおい"という単純な分類でさえも分からないことがたくさんあります。
「 いいにおいというのは、ほとんどの人にとって、いいにおいです。例えば、バニラ、レモンなどのにおいは、誰にとってもいいにおいといえます。ところが、腐ったチーズや、夏に履いていた靴下のにおいが好きな人もいます。これはとても面白いものです。また、犬や猫は主人のにおいであれば、悪臭と呼べるものにも反応して、鼻を寄せて好んでにおいを嗅ぎます」。
悪臭に対する嗜好性は個人差が大きいのが不思議なところです。それに、きゅう覚には慣れやすいという特徴もあります。
私の知人で、尊敬しています。外崎肇一博士、今度も嗅覚研究に励んで参ります。五感プロデュース研究所、主席研究員、荒木行彦、
栃木県出身。理学博士。明海大学歯学部教授。専門は感覚生理学。東京教育大学理学部生物学科卒業、同大学院理学研究科博士課程修了。聖マリアンナ医科大学生理学教室助手、アメリカ合衆国フロリダ州立大学生物学客員研究員、朝日大学歯学部教授、岐阜大学農学部獣医学科大学院教授などを経て、平成14年より現職 に就く。著書に『「におい」と「香り」の正体』(青春出版社)『がんは「におい」でわかる!』(光文社)がある。最近はがんのにおいに対しての研究を続けており、がん探知犬マリーンを使ってにおい成分の割り出しを目指している。
世の中にはさまざまなにおいが存在します。食欲をそそるにおいやうっとりするような草花のにおい、鼻をつまみたくなるようなゴミのにおいなど……。例を挙げていけば切りがありませんが、私たちの生活に欠かせないにおいに対する感覚は、一体どういうものなのでしょう。
「人間の感覚器は、目、耳、鼻、舌、皮膚などがあります。そのような感覚器の興奮が神経を伝わっていき、多くはまずは脳の一部の視床に入って統合された結果が さらに上位の 脳に伝えられていきます。ところがにおいのきゅう覚は視床を経由せずに、直接脳に伝えられるのです。においを嗅(か)いだことで一瞬にして記憶がパッとよみがえるというような感覚を経験されたことがある人もいると思いますが、これは、ほかの感覚と違ってにおいがダイレクトに脳に伝わるからなのです」。
視床を経由しないにおいの感覚は、大脳の本能的なところに直接作用します。目や耳に比べると、軽視されているきゅう覚ですが、人間にとっては重要な感覚といえます。しかし、きゅう覚にはまだ多くの謎が残っています。
「医学系のどんな専門書でも目や耳の項目にはたいがい20ページの記述があります。ところが鼻になると、どんなに詳しい専門 書でも2~3ページぐらいしか書かれていません。要するに、器官そのもののことがまだあまり分かっていないのです。数年前に、においを研究していた人が ノーベル賞を取りましたが、それはにおいの受容体が百種類ほどあることが分かっただけで、その百種類ある受容体とにおいは具体的にどのように関連するものなのか、どう違うのかということは分かっていないのです」。
きゅう覚は悪臭に対しても慣れやすい
人体の中ではまだ解明されていないことが多いきゅう覚。これは経験や学習による面が大きく作用しているせいでもあるようです。"いいにおい"と"いやなにおい"という単純な分類でさえも分からないことがたくさんあります。
「 いいにおいというのは、ほとんどの人にとって、いいにおいです。例えば、バニラ、レモンなどのにおいは、誰にとってもいいにおいといえます。ところが、腐ったチーズや、夏に履いていた靴下のにおいが好きな人もいます。これはとても面白いものです。また、犬や猫は主人のにおいであれば、悪臭と呼べるものにも反応して、鼻を寄せて好んでにおいを嗅ぎます」。
悪臭に対する嗜好性は個人差が大きいのが不思議なところです。それに、きゅう覚には慣れやすいという特徴もあります。
私の知人で、尊敬しています。外崎肇一博士、今度も嗅覚研究に励んで参ります。五感プロデュース研究所、主席研究員、荒木行彦、