陰陽師 安倍晴明(志村有弘著)

2024-09-10 00:00:34 | 歴史
ドラマ『光る君へ』で、陰陽師安倍晴明は平安時代の底流である公家社会の怨念や大和朝廷から続く血なまぐさい邪鬼から国家を守り、来るべき未来への道筋を予言していくスーパーパワーの持ち主として登場。



一体、彼は何者だったのか。大いに研究されているようだ。本著はそれらのまとめのような書なのだが、注意して読まないといけないのは、晴明の事績と言われているものの中には、後人が創作したものや、他者の事績も混じっているのだが、そういった不純物を除いていって残るものこそ、彼の仕事なのだが、その宇宙の神のような事柄が彼のスーパーパワーの賜物と断定されているように感じる。

晴明ファンとしてはそれでいいのだが、同時代人にそう信じさせるオーラがあったのは事実だろう。

まず血筋だが、700年頃の右大臣阿倍御主人(読み=みうし?)から十代目と言われる。(阿倍と安倍の混用は普通のことらしい。ついでに、晴明と清明の混用も多い)この右大臣だが、竹取物語に登場し、かぐや姫に結婚を迫った男。いかにもそれらしい。その後、安倍氏は下級役人として淡路守(従五位)も輩出しているが、もっぱら陰陽師を拝命していた。

ただ、晴明の時代、陰陽道の主流は賀茂家一族が握っていて、晴明も賀茂忠行に師事していたが、あるとき師は晴明が鬼を見ることができることに気付き、同じく実子の賀茂保憲とその子の光栄を暦道、安倍家を天文道と分割した。といっても、二つの道に大きな差はなく、大行事の時は、安倍晴明と賀茂光栄の両者が祈祷にいったりしているようだ。ライバルでもあり、共存性もあるということだろう。

その二人の中で晴明が力を得ていったのは、明らかに藤原道長のブレーンだったからだ。家もすぐそばだった。都には陰謀が充満していたわけだ。究極的には皇位継承ルールがないことと、耳目(人事異動)で、有利な地位を獲得するためだ。そのため、架空のクーデター事件がいくつもあり、容疑者は失脚し、都を追い出され、食べ物もなく客死していた。天災地変も多く、怨霊が何種類も都大路を飛び回っていた。

陰陽師の需要が多かったわけだ。

本書には、晴明の業績が数多く紹介されている。信じるかどうかは読者次第だが、「信じない」とここに書くと、夢の中に封じ込められて千年眠ったままにされそうなので、真実性を否定しない。

ドラマの筋に不都合があるからだろうから紹介されなかったが、一条天皇は安倍晴明の歿後、彼の業績に恩義を認め、安倍家の邸の隣に晴明神社を創建している。(ドラマでは一条天皇の愛妻の定子が妊娠した時に、道長に「呪詛いたしましょうか」と持ち掛けていた。)

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