悪の花(ボードレール 杉本秀太郎 詩集)

2024-09-02 00:00:37 | 書評
先日、観た『水槽』という映画の中で、主役の高校生男女各一名が新潮文庫の『悪の華』のあるページを破る場面があった。一冊は高校の図書館の本で、一冊は古本を購入したもの。図書館本の方は見つかると停学だろう。古本は破っても無罪だが、破った後の本をブックオフに売ると、詐欺罪になるかもしれない。



それで、気になって無料で読める図書館の電子書籍で借りる。破ることはできない。翻訳は杉本秀太郎氏。新潮文庫の方は堀口大學。フランス語は読めないので。

読んだ後の感想だが、長編詩ではないので、「悪の花」というテーマで統一されているわけではない。世の中の悪行をすべて美化しているわけではない。あえて言うと行為としての悪には本質的な美を認め賛美する一方、不潔とか老化といった外見的な醜悪は毛嫌いしているような感じがある。もっともそれは人類の永遠の性かもしれないので著者や訳者は責められないだろう。

巻末の長い解説を読むとわかったが、この詩集は、出来の良い詩も悪い詩も混在していると言われていて、さらに第一版の時に多くの部分が猥雑として発禁されたまま、第二版にも第三版にも復活されていないそうだ。

ということで、本書のどの部分を高校生男女が切り取る必要があったかわからない上、切り取る部分が彼らにとって重要な一節だったのか、逆に読みたくない部分だったのかはわからない(常識的に言うと切り取って持ち歩くのは「お気に入り」ということだろう)。

沢山の言葉の中に光る一節がある(砂浜のダイヤモンド)ということでいうと、寺山修司のようだとも思う。

ところで「悪の華」と「悪の花」。「華」という字は漢和辞典では、古字として具体的な花というよりも、「良い」とか「美しい」とか「中心」という抽象化された意味に使われるそうで、「花」は新字で具体的な咲く花を含んだ意味に広く使われるようだ

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