停留している『C線上のアリア』

2024-09-03 00:00:24 | 書評
朝日新聞の連載小説『C線上のアリア』。執筆は湊かなえ氏。当代きっての「イヤミスの女王」といわれている。読んだ後、嫌な気持ちになるミステリーを書く第一人者。まあ、現代は奇妙な時代だ。

前任の方の小説が、楠木正行という楠木正成の嫡男を主人公にした時代小説で、ちょっと地味で暗かったのだが、4月より連載が始まった本作は、元交通遺児の50歳位の女性が主人公として登場し、養母として少女時代を育ててくれた叔母が自宅をゴミ屋敷にしたところから始まって、養護施設への入所手続きや、ごみの片づけをすることになる。叔母が大事にしている金庫を開錠するため、イケメン開錠士が登場するが、金庫の中には貴重品ではなくコンセント付きの電気コードが入っていた。

さらに、主人公の少女の頃の村上春樹好きの元カレと再開。二人とも既婚者なので、W不倫かと思ったが、不調に終わる。その元カレの母親は叔母と因縁があるような感じだが・・その70代の二人の過去のことが叔母の日記に書かれているのだが、二人とも姑にいびられていたというのだが、40年~50年前の話だ。

かなりテンポよくテーマが変っていて快調に読んでいたが、今月になって進行が停滞してきた。心配なので、ネットで評判を探してみると、展開に対して感想を書かれている人も何人かいて、そのブログにコメントで自分の意見や今後の展開の推測を書くという方が非常に多いということを知る。

(こういう人は夏休みの読書感想文が得意だったのだろう。私は不得意だったので、自作の戯曲やミステリーを書いて、心ならずも教師に盗作疑惑をかけられ、それ以降、教師不信の塊になった。8月31日に電車に乗っていたら男子中学生が一生懸命に新潮文庫の「坊ちゃん」を読んでいたのだが、早く書かないと間に合わず、代行業者に頼まないといけない。年上の知人が定年後、代筆代行業者の所属ライターになっていて、国文学部の女子大生の卒論には、中学生レベルの読書感想文を手直しして使っているといっていた。)

本台に戻ると、今、大きなテーマとなっている話題は、「本作は、ミステリーなのだろうか」ということ。

多くの読者は、本作はミステリーだろうと思っている、ミステリー作家だからだ。事実、最初の頃は、金庫の番号をあえて記載したり、村上春樹の『ノルウェーの森』の上巻と下巻が別の場所にあったり、なんらかの伏線の種まき風に思えたのだが、ネット上の意見で多いのが、
「5ヶ月も経ったのに、まだ、何ら事件が起きてないではないか」ということ。確かに登場人物は奇妙な人が多いが、殺人事件どころか詐欺もなければ遺産相続のもめ事もない。わずかにブランド品のスカーフが一枚盗まれたという可能性はあるのだが、スカーフ一枚の盗難事件の小説を楽しむことはないだろう。

すでに複数の方は「きょう事件が起きなければ、読むのを止める」と脅迫的表現を始めている。「読むのを止める」ではなく「新聞を止める」と書かないと脅迫効果はないだろうが、困ったものだ。本当にミステリーなのだろうか。嫁×姑問題は重大な問題ではあるが、読んで楽しくなることはないと思うのだが。

これから読む今日の朝刊で、ついに仏様が登場するのだろうか。

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