熱(高樹のぶ子著)

2010-10-18 00:00:21 | 書評
netsu一応、恋愛小説。

書棚の整理のため、駄本の類をポイポイしているのだが、恋愛小説関係は、もう一度読んでから捨てることにしている。

実際、二度目に読んでも碌に覚えていないのだから、うれしいような呆れるようなというところもある(これは恋愛小説には限らず、他のジャンルも同様)。もの忘れというのだろうか、あるいは、根本的に本の読み方がおかしいのだろうか。

さて、恋愛小説というのは、読んで面白くないと小説の役目を果たさないのだから、いずれアブノーマルな筋に走ることになる。BLなんかみんなそうだ。しかし、走り過ぎると、現実から大きく遊離するので、やや非現実になっていく。

そういう、現実には存在しない恋愛物というのもジャンルのひとつで、古くは源氏物語やロメオとジュリエット、失楽園(渡辺淳一)などがある。

一方、ちまちまと男女の心のひだを書き綴る手法もあるが、現実的な恋愛環境の不条理さからいって、現実より陳腐な小説なんか、読まれるはずない。

まあ、そんなことで成立の難しいシチュエーション設定を、『男=新聞記者』、『女=生物の教師』という収入安定カップルで行っている。

そして、結婚したものの、取材時間と称した浮気の結果、愛人に子どもを産ませて離婚した夫と、毎年、授業でカエルの解剖を続けているうちに、再度出会って、今度は妻ではなく愛人の座に座った女教師の奇妙で、かつドロドロぐちゃぐちゃな関係が進んでいくわけだ。

そして、四十歳に近づいても二重生活を続ける絶倫記者にも、ついに運命の悪戯が待ち受けていたわけだ。

悪性腫瘍の可能性が70%ということになる。(医者がそういう場合は実際は95%くらいかもしれないが)


小説は、そのあたりで、無責任に終わってしまうのだが、まあ、それ以上書き進むと、小説家が必死に築き上げた『美の世界』が、どんどん『醜』の方に流れていくからではないだろうか。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿