ノーベル文学賞、発表直前につき・・・

2006-10-12 12:00:33 | 書評
日本時間12日20時発表が予想されるノーベル文学賞。果たして、村上春樹が受賞するのかどうか?

詳しくは、2006年3月25日「村上春樹氏にカフカ賞。もう一つ串刺し?」に書いたので、なるべく重複は避けたいが、

1.ノーベル賞情報を裏から探り(?)、先行受賞することによって、自らの文学賞の格付けを上げようとしていると思われるカフカ賞を受賞した。

2.1988年:N・マハフーズ(エジプト)、1994年:大江健三郎、2000年:高行順(中国)と6年に1回ずつ非白人の枠があるように見え、ことしはその番になる。白人の人口は全人口の1/6なのだが、ノーベル文学賞の確率が5/6ということは、おそるべき倍率差なのだが、そう考えれると、今年は、誰が「白人の刺身のツマ」あるいは「アイスクリームのウェハウス」になるのかといったことかもしれない。


一方、私は多くの日本人と同様に”ハルキスト”の一人であり、大部分の著書は読んでいるのだが、仮に、彼が受賞した際、各メディアが彼の代表作をどのような順番で記載するのか、それが楽しみである。

おそらく、無難な順番は、「海辺のカフカ」「アンダーグラウンド」「ねじまき鳥クロニクル」「ノルウェーの森」「国境の南、太陽の西」となるのではないだろうか。

私見としてだが、「海辺のカフカ」は、はずせないところだ。「アンダーグラウンド」は地下鉄サリン事件を追ったノンフィクションで、カポーティの「冷血」とよく比較されるが、被害者の側から事件を捉えていて、「冷血」とは大きく視点が異なる。「ねじまき鳥」は3部作だが、1部、2部が同時に発売され、これは素晴らしいと思ったが、数年後完結した第3部は、まとまりが悪い。「ノルウェーの森」は彼の著作群の中では、日本でも世界でも最も売れていて(つまり読まれている)、珍しく濃密なプロットが展開していき、小説として非常に重要な、最後の着地がきちっと決まっている。難をあげれば(普通の読者は気づかないだろうが)、筋立ての中で「そろそろ消えた方がいい登場人物」が、簡単にいなくなったり、死んだりする。現代社会では、人間はなかなか消息不明になれないものだし、さっさと病死したりはしない。

個人的ベスト5を作ると、1.「カフカ」、2.「ダンス・ダンス・ダンス」、3.「ねじまき鳥」、4.「遠い太鼓(エッセイ)」、5.「ノルウェー」かな。そして、彼が出版社に受けがいいのは、失敗作が少ないということか(少しはあるが)。

今回、はずすと、次のチャンスは6年後、ということになるのだろうか。まあ、フィリップ・ロスも受賞していないのだからあきらめることでもないかな。

ただ、ノーベル賞をもらうと、急に態度が横柄になって、誰かのように、妙な実験作を多発されても、ついていけないかもしれない、というのがちょっと心配。


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