あるユダヤ人医師のこどもが辿りついた場所

2007-09-21 00:00:10 | 投資
73dc684f.jpg数日前に、ピーター・フランクルさんの講演会に行く。「伝統・安定・成長:欧州の魅力に迫る」、というタイトルだが、実際はフランスに本社を置くBNPパリバ銀行の投資部門の会社が日本で設定する投資信託の説明会の前座講演である。

六本木の有名なビルの、上の方にあるホールは、やや空席が残る。彼の講演回数、多過ぎなのかもしれない。そして、ヒルズと言うと、ビルに近づくのも服装に悩むのだが、その必要はまったくなし。本人は、クラウン(ピエロ)のスーツで登場。そう。お得意の大道芸であるジャグリングを快調に回しながら、出身のハンガリーのことから欧州を話し始める。

ところで、フランクルさんの経歴だが、1953年ハンガリー生まれ(北の湖親方やテレサ・テンと同い年?)。両親はユダヤ系で収容所生活を送ったことがあるそうだ。1971年に、数学オリンピックで金メダルを受賞。数学オリンピックというのは、コトバを聞いたことはあるが知見がない分野なのでよくわからないが、スポーツのオリンピックと同様にいくつかの部門があるのだろうか。金メダル1つ取るだけで、一生食っていけるというのは同じなのかもしれない。

そして、その後、博士号を取得した直後の1979年にフランスへ亡命。1988年から日本在住。数学のできる大道芸人として、全国各地での講演会で、ジャグリングの妙技を披露しているようだ。

そして、講演の中で明らかにされたのだが、このジャグリング芸を教えてもらったのは、2年間アメリカに生活している時に米国の数学者から、ということだそうだ(芸を覚えなければ、数学一本で、もっと人類のためになる道を進んだかもしれないわけだ)。


話は、ハンガリーのことからだが、面積は日本の1/4。とても小さいが、欧州の国はほとんどが日本よりずっと小さい(別の講演会で聞いたのだが、オランダ=九州、オーストリー=北海道と、ほぼ人口も面積もGDPも同じらしい)。欧州人から見ると、日本人が口癖のように言っている「日本はちっぽけな国だ!」というのは、米国やロシアや中国と比べているからで、そういう大きな国と比較して考えることがとても理解できないそうだ。

さらに、日本人は近年、特に英語に夢中になっているが、英語ができても「二流のアメリカ人になるだけ」で、それよりも「一流の日本人になる」方がいいんじゃないか、とのこと(フランクルさんは実は10ヶ国語が使えるそうである)。同じような話を読んだことがあるのが、ガーシュインのこと。米国人のガーシュインがわざわざフランスに、ラヴェルを訪ね、オーケストラ用の楽譜の書き方を教わろうとしたところ、ラヴェルは「二流のラヴェルになるより、一流のガーシュインを目指すように」と忠告したそうだ。

そして、最近の欧州経済の好景気の背景については、よく言われているように、旧共産国の安い労働力を活用しているということで、まだ地域間格差は解消されないだろう、と妙な評価をされていた。私の住居のそばのIKEAを見ても、製品の大半はルーマニア、インド、中国製品で、本当に一部だけのデザインの入った製品がスウェーデン製で、それはすばらしく高額である。

また、現在の日本で話題の個人間格差問題についてだが、いわゆるジニ係数は欧州は20%程度、米国は40%。日本は20%の世界から30%に近づいていて、米国型に近いと、数学的分析をされていた。ジニ係数は、おおまかに言えば、上位10%の人に集まる富の比率みたいな指数である。例えば、日本人は一人1000万円平均の預金を持っているそうだ。3人家族なら3000万円。ところが、そういう平均値の人はあまりいないわけ。例えば、会社の同僚10人で預金残高を紙に書いてランダムに混ぜ、開いてみると、一人が1億円で残る9人がオケラだとすると、平均は1000万円だが、ジニ係数は100%ということになるらしい。

そしてフランクル先生がどうしてもなじめないのが米国人の性格で、どうみてもおカネを使うために生きている、と思えるそうだ。例えば、前述のジャグラーを教えてもらった70歳代の米国の数学者と時々オリンピックなどで会って話をすることがあるそうだが、話の内容は、おカネのことばかりだそうだ。最近は、サンディエゴにある床面積1000平方メートル(300坪)の、海が見え、アシカの声の聞こえる500万ドルの家を売って、700万ドルの家に転居する話を聞いたそうだ。特にアシカの声に不満だったのではなく、700万ドルの家が買えるようになったから転居するのだそうだ(日本でアシカの声が聞こえる家を探せば、相当、格安で買えるのは間違いないのだが)。

そして、フランクルさんは、日本人に対して、明治時代に日本が標榜した「脱亞入歐」をもじって、「脱米入歐」を勧められるのである。欧州人から見ると、人口も国土も資源も、まったく不足している日本が米国と同じ目標に向うのは、いかにも無理に見えるということらしいが、その忠告は1940年頃に聞くべきだったのだろう。しかし、私見なのだが、日本は米国や中国やEU全体を相手に、互角に張り合おうという意識がなくなったら、それでおしまいなのではないだろうかと思うのである。

そして、脱米入歐を目指そうにも、残念ながら環太平洋に位置する関係上、いざ戦争危機の時には、ハンガリー=オランダ=オーストリー連合軍からの助けを待つわけにはいかない事情なのである。


そして、彼は次なる講演会の場である北海道に向ってあわただしく会場を去ったわけである。実は、この忙しい講演ビジネスモデルはシステム化されていて、彼のホームページを見ると、10種類以上のテーマについて講演パッケージができているのである。依頼人は、その都合によってコースを選べばいいことになっている。落語家みたいだ。そして、ただ一つシステム化されていないのは、講演料ということなのである。応相談。


講演会の後半は、BNPパリバ関連会社の日本人部長の講演だが、当然ながら途中退席多数の上、質問はファンドのことに留まらず、BNPパリバ銀行とサブプライムローンの関係について。いくら説明されても、疑問の多々が残り、結局は「サブプライムローンの影響はまったくありません」と根拠希薄に安全宣言され、終了となるのであった。

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