船舶用エンジンの燃費偽装

2024-08-23 00:00:08 | 企業抗争
川崎重工の船舶用エンジンの燃費偽装は2000年から続いていたという。船舶の場合、エンジン単体を買う企業はない。船の新造の時に主に海運会社がエンジンのメーカーを指定する。それを前提に造船所はその他の海運会社からの要望と合わせて、見積もりを作るわけだ。

川崎重工のドックで建造する場合もあれば、他の造船所が川崎重工からエンジンを買って造船する場合もある。

ほとんどの船舶はエンジンの出力を回転運動に変え、シャフトによってプロペラに直結させるので、エンジンを交換するのはほとんど無理だ。船舶の寿命は10~20年と言われるので不正が始まった頃の船の多くは、既に廃船になっているだろう。

会社の方は、「安全性は問題ない」と言っているが、船舶のエンジンに期待しているのは「燃費」だ。飛行機じゃないので、エンジン停止は非常に困るが、それでも海に浮かんでいる。

エンジンに期待されている能力は主に二つ。
一つは速度。一つは燃費。安全性の問題だが、エンジンのメンテナンスは主に機関士といわれる船員が行うのだが、そもそも安全でないエンジンなどあってはならないわけで、そこは問題が違う。

実は速度と燃費は逆の関係で、速度を上げると燃費はその3乗悪くなると言われる。とはいえ、早く走ることで、年間を通した運送量が増えるので、収益との関係は微妙だ。

船舶会社の利益は、運賃収入―船舶建造費―燃料代―船員費(給料)ということになる。およそ燃料代と船員費が40%ずつというように燃費は重要。自動車の燃費と同じように使用者や造船所が燃費を測定するのは、ほぼ無理。速度や潮流に左右される。だから不正をしても見抜かれないわけで、今回の件で損害賠償を求めたくても損害額の算定は困難だろうが、次の造船の時には選ばれないだろう。