エミューどら焼を食べる前に

2005-01-07 23:02:28 | 美術館・博物館・工芸品
7927677d.jpg
1月4日共同発で、東京農業大学のオホーツクキャンパスで「エミュー」の飼育を商業化した話題が掲載されていた。
 
エミュー卵のどら焼き好評 東京農大学生らが 1円起業
 
東京農大オホーツクキャンパスの学生らが設立した資本金1円の株式会社が、オーストラリアに生息するダチョウに似た鳥エミューを利用した特産品づくりを進めている。卵を使ったどら焼き、保湿用オイル、オイルを使ったせっけんの3種。インターネットで販売し、関東地方からも問い合わせが相次ぐなど好評だ。
 会社は「東京農大バイオインダストリー」で、生物産業学部の永島俊夫教授と地元有志、学生ら計13人が2004年4月に設立した。
 どら焼きの皮は淡泊さが特徴の卵を使い、「甘いものが苦手な人にも」とさっぱり味。オホーツク海の深層水を使い、塩味も効いている。オイルはエミューの脂肪から採れ、肌によくなじむ。
 子どもとの触れ合い牧場としてエミューを飼育していた牧場が、繁殖法の研究を永島教授に委託したのが始まり。「地場産業に育てるため、知識を出し合いたい」と飼育や加工、販売のプロなどが集まり、起業した。
  (共同通信) - 1月4日12時6分更新
 
実は、東京農業大学の網走にあるオホーツクキャンパスがエミューの飼育に取り組んでいたことは、昨年夏から知っていた。博物館フリークは、数少ない未踏破博物館として、この世田谷区馬事公苑にある東京農業大学付属博物館で行われた「オホーツク自然と産業展」にでかけたわけである。
 
さて、このあとどちらの方向で書こうかということだが、「オーストラリア原産の鳥を日本に連れてくることの可否」路線で書くか、「農業を近代的産業ととらえ大規模資本の投入を是とする東京農業大学と、農村と都会の対立構造ととらえ、保護農業の立場で農民の自立をめざす東京農工大学との対決構造」路線で書くか、あるいは「博物館としてのプアさ」を指摘するか、「エミューオイルの効能」路線でいくかだが、なるべく浅く広くやってみる。
 
エミューはダチョウ科の鳥だ。背丈は180センチくらい。世界第二の大きさ。本物のダチョウは南アフリカに生息している。なぜ、遠く離れたオーストラリアにいるのかはわからないが、地球上にはダチョウやエミューより大きな鳥は数多くいたらしい。ごく近年に限ると1848年にマダガスカルで死滅したエビオルニス(エビジョンイルではない)は背丈3m、500?。1773年にニュージーランドで死滅したモアは3.6m、230?である。ダチョウは上位選手がドーピング検査で失格して金メダルになったハンマー投げの選手のようだ。そしてエミューは繰り上げ銀メダル。
絶滅の原因はあきらかに人間だ。直接、人間に野生のまま捕獲されたか、人間が持ち込んだ猫やネズミに卵や雛を食べられて。
 
現在エミューは10万羽から20万羽といわれている。結構少ない。しかしダチョウと同様に人間の保護下にいるため、絶滅することはないだろう。卵は、草原に巣を作ることから、殻の色が緑色と独特だ。抱卵はメスの仕事だが、育児はオスの仕事らしい。ペンギンとは逆だ。
 
しかし、エミューが牧場から脱走して完全に野生に戻るとどうなるかよくわからない。日本でも一部の離島ではニワトリが野生化して、少しは空を飛んだりしているようだし、エミューだって日本には、人間以外の天敵動物は少ないだろう。いや、やはり空を飛べない限り大量の餌を必要とする大型鳥の野生生活は難しいだろうか。結局、ニワトリと同じ管理飼育になるのだろうか。あとは、売上高-変動費-固定費がプラスなのかマイナスなのかという純然とした経営学の中で生き残れるかどうかなのだろう。まあ、ブラックバスと違って野生繁殖力は弱いのだろうし、いざとなれば捕まえるのは簡単だろうし、近縁種も日本にはいないから交配もないのだろう。しかし、本当は、その程度のチェックではダメなのであり、エミューを特定の宿主とするウィルスレベルまでのチェックが必要なのだが・・
 
次に、大学抗争の話だが、自身がインサイダーではないのでよくわからないところはあるが、知人で私立大学から旧国立の東京農工大学の大学院にもぐった方がいた。その方はどちらかといえば、反開発派に近く、農業者が農業形態を守ることにより、都市と農村の二極化に進むという考え方が好みで、アーバンとか近郊農業とかいう怪しげな概念は向きでなかった。そういう意味で思想的には、国立の方が軸足に近くそちらに行ったのが、運のツキで、見事にアカハラの餌食となった。(注・アカハラ=アカデミック・ハラスメント;「開かれた大学」を広言するために、他大学からの学生から入学金と授業料を納入していただくものの、博士号の前に乗り越えられない試練を与えること)
 
そんな仕打ちを受けながら、それでも東農大はいかん!と言われているのだが、エミューのどら焼を作るような「農業技術の工業化」がいけないのかどうかは私にはわからない。農工大の方は、農業に遺伝子研究のような「科学を持ち込んでいる」わけで、工業か科学かというような見分けをつけるのは容易ではない(ように思える)。むしろ農業人口が3%程度に至った現在の状況では、科学も技術も必要だろうとしかいえない。
 
農工大から追い出されても東農大を支持できないというのが、単に「過去債務を片付けてから」と、民主党から仲間はずれにされた社民党が、自民党を支持できないという程度のことなら簡単に理解できる話だ。
 
さて、色々書いたけれども、問題はエミューが口に合うかどうかだろう。直径15センチの緑色の卵と、何色かわからないがローカロリーといわれるエミュー肉を焼鳥にでもして食べてみるのが先だろう。一羽丸ごと使った、ローストエミューというのも豪快かもしれない。
 
肉と皮の間にある脂肪分からとれるエミューオイルというのが、花粉症の軽減に役立つという非公式情報もあるが、花粉症患者の藁をもすがる気持ちにつけこんだデマかもしれないし・・・
 
それにしても、東京農業大学の付属博物館は、小学校の展示会程度のレベルとしか言えない。予算のことはわからないが、あんまりだ。部外者に見せるようにはできていない。要反省と思う