リクエストがございましたので、お応えしたいと思います。
一般的なエンジンの焼き付きというと、バイクのエンジンではピストンとシリンダーをまず思い浮かべます。
ハーレーのエンジンで、ピストンとシリンダーが焼きついたのは残念ながら?見た事はありません。
アルミニウム製のピストンを、誰が最初にエンジンに使ったかは分かりませんが、それは1910年ごろのようです。その当時はヨーロッパでは、シュナイダーカップなど国の威厳を賭けてエアレースがさかんに行われていましたが、初めてアルミピストンを使ってエアレースにエントリーした会社は出場を拒否された事もあるそうです。
燃焼ガスの温度は1000度以上もあるので、融点が650度のアルミは溶けてしまうだろうと考えられてしまったのでしょう。
ダイムラーベンツもその頃のグランプリカーで、4バルブエンジンを作っていますけれど、ピストンを鋳鉄製とアルミ製の2通り作って、ドライバーに選ばせるというエピソードも残っています。
このようにアルミピストンの船出は、あまり歓迎されたものではなかったようですが、今ではアルミ以外のものを見かけないほどになりましたね。
鉄とアルミの金属特性を簡単に較べると、比重は2分の1、融点は2.5分の1、熱膨張率は2倍、熱伝導率は10倍
アルミのピストンがよほどの事が無い限り溶けないのは、熱伝導率が良いからなんです。このブログのマフラーステーの項でステンレスのバーを赤熱させている写真がありますが、鉄系の金属では赤熱(900度くらい)させても20cmも離れていれば素手で触れます。アルミだと赤熱はしませんけど、同じ条件で加熱すれば、1分で全体が触れなくなってしまいます。
燃焼ガスに接するピストン頂部は融点まで行かずに、その熱はピストン全体にいきわたる事になります。
しかし、最近の希薄燃焼をさせる設計ですと、ハーレーでもTC88などはピストンの裏にオイルを噴射してピストンを積極的に冷やしていますね。このオイルジェットはターボエンジンや高出力エンジンなどの熱的負荷の大きいエンジンの常套手段でもありました。
通常では負担の大きいピストンも適切な運転では滅多に故障しません。しかし、オクタン価の低い燃料や運転の仕方では、ノッキングやプレイグニッションなどの異常燃焼をさせることにより、燃焼温度を上げすぎてしまう事もあります。
いやいや、まだありましたぞ。
何回も触れていますが、排ガス規制のために本格的な希薄燃焼とまで行かなくても、現在新車で売られているバイク、クルマはかなりA/Fは薄くなっています。そのため燃焼温度は高くなっているうえ、オーバーヒートに近くなってくると更にノッキングなどが起りやすくなります。そうすると温度の上昇は上乗せされてしまいますね。そこに抜けの良いマフラーを付けると相対的にA/Fは薄くなりますので・・・・・・。「知らないという事」は恐ろしい事です。
1950年代には、熱膨張率を低くおさえたアルミ合金を使ったローエキッスピストンも発明され安定した性能を発揮するになり、膨張を想定したクリアランスが設定されていますが、摩擦熱も考えなくてはなりません。
摩擦熱を応用した摩擦圧接工法というのもあるくらいで、エンジンのバルブを作るのにステムと傘の部分を押し付けながら回転させると、溶接されてしまうというものです。これは異種金属の溶接も可能にしています。
そうなんですね、ピストンとシリンダーの焼き付きは異種金属の溶接とも言えます。
摩擦熱をクリアするには潤滑です。シリンダーの内面を微細なデコボコの形状に加工して、そこにオイルをためておく事によりピストンの焼き付きは随分減ったと思われます。これはクロスハッチと呼ばれています。
しかし、クロスハッチは磨耗してしまうとなくなってしまいます。そこで日本で発明されたのがボロン添加鋳造です。ボロンライナーと呼ばれ、固い部分とそれほど固くない部分を混在させてマクロなオイル溜りを作り、画期的なほど寿命をのばしています。
ワタシが30年間以上、整備の現場に居りましても、意外にピストンの焼き付きを目にした事は少ないのです。2サイクルエンジンのスクーターでオイルを切らして焼き付きという「間抜けな故障」が一番多いかもしれません。
今日は長くなってしまったので明日に続くということで。
一般的なエンジンの焼き付きというと、バイクのエンジンではピストンとシリンダーをまず思い浮かべます。
ハーレーのエンジンで、ピストンとシリンダーが焼きついたのは残念ながら?見た事はありません。
アルミニウム製のピストンを、誰が最初にエンジンに使ったかは分かりませんが、それは1910年ごろのようです。その当時はヨーロッパでは、シュナイダーカップなど国の威厳を賭けてエアレースがさかんに行われていましたが、初めてアルミピストンを使ってエアレースにエントリーした会社は出場を拒否された事もあるそうです。
燃焼ガスの温度は1000度以上もあるので、融点が650度のアルミは溶けてしまうだろうと考えられてしまったのでしょう。
ダイムラーベンツもその頃のグランプリカーで、4バルブエンジンを作っていますけれど、ピストンを鋳鉄製とアルミ製の2通り作って、ドライバーに選ばせるというエピソードも残っています。
このようにアルミピストンの船出は、あまり歓迎されたものではなかったようですが、今ではアルミ以外のものを見かけないほどになりましたね。
鉄とアルミの金属特性を簡単に較べると、比重は2分の1、融点は2.5分の1、熱膨張率は2倍、熱伝導率は10倍
アルミのピストンがよほどの事が無い限り溶けないのは、熱伝導率が良いからなんです。このブログのマフラーステーの項でステンレスのバーを赤熱させている写真がありますが、鉄系の金属では赤熱(900度くらい)させても20cmも離れていれば素手で触れます。アルミだと赤熱はしませんけど、同じ条件で加熱すれば、1分で全体が触れなくなってしまいます。
燃焼ガスに接するピストン頂部は融点まで行かずに、その熱はピストン全体にいきわたる事になります。
しかし、最近の希薄燃焼をさせる設計ですと、ハーレーでもTC88などはピストンの裏にオイルを噴射してピストンを積極的に冷やしていますね。このオイルジェットはターボエンジンや高出力エンジンなどの熱的負荷の大きいエンジンの常套手段でもありました。
通常では負担の大きいピストンも適切な運転では滅多に故障しません。しかし、オクタン価の低い燃料や運転の仕方では、ノッキングやプレイグニッションなどの異常燃焼をさせることにより、燃焼温度を上げすぎてしまう事もあります。
いやいや、まだありましたぞ。
何回も触れていますが、排ガス規制のために本格的な希薄燃焼とまで行かなくても、現在新車で売られているバイク、クルマはかなりA/Fは薄くなっています。そのため燃焼温度は高くなっているうえ、オーバーヒートに近くなってくると更にノッキングなどが起りやすくなります。そうすると温度の上昇は上乗せされてしまいますね。そこに抜けの良いマフラーを付けると相対的にA/Fは薄くなりますので・・・・・・。「知らないという事」は恐ろしい事です。
1950年代には、熱膨張率を低くおさえたアルミ合金を使ったローエキッスピストンも発明され安定した性能を発揮するになり、膨張を想定したクリアランスが設定されていますが、摩擦熱も考えなくてはなりません。
摩擦熱を応用した摩擦圧接工法というのもあるくらいで、エンジンのバルブを作るのにステムと傘の部分を押し付けながら回転させると、溶接されてしまうというものです。これは異種金属の溶接も可能にしています。
そうなんですね、ピストンとシリンダーの焼き付きは異種金属の溶接とも言えます。
摩擦熱をクリアするには潤滑です。シリンダーの内面を微細なデコボコの形状に加工して、そこにオイルをためておく事によりピストンの焼き付きは随分減ったと思われます。これはクロスハッチと呼ばれています。
しかし、クロスハッチは磨耗してしまうとなくなってしまいます。そこで日本で発明されたのがボロン添加鋳造です。ボロンライナーと呼ばれ、固い部分とそれほど固くない部分を混在させてマクロなオイル溜りを作り、画期的なほど寿命をのばしています。
ワタシが30年間以上、整備の現場に居りましても、意外にピストンの焼き付きを目にした事は少ないのです。2サイクルエンジンのスクーターでオイルを切らして焼き付きという「間抜けな故障」が一番多いかもしれません。
今日は長くなってしまったので明日に続くということで。