日本の鳥に関する最初の記録は『魏志倭人伝』にあって、「この国にはカササギがいない」と記されているそうです。ちなみに、日本にいない動物として、牛、馬、虎、豹、羊もリストアップされているとか。
カササギは現在は佐賀県など一部地域にいますが、秀吉の朝鮮出兵の際に大陸から持ち帰ったと言われていて、それ以前は日本には生息していなかったわけです。
日本に生息する鳥についての最初の記録は、『日本書紀』に登場するセキレイ。書くのがはばかれますが、天から降りてきたイザナギとイザナミは、セキレイが尾を上下に振る動きを見て夫婦和合の方法を知り、次々と子ども(=国や神)を生んだ、という話になっています。
セキレイの一種、ハクセキレイ
原文は、「時に鶺鴒(にわくなぶり=セキレイ)あり、飛び来って其の首尾を揺(うごか)す。二神見そなはして之に学(なら)ひて、即ち交(とつぎ)の道を得つ」。
現在、日本でよく見られるセキレイはハクセキレイ、キセキレイ、セグロセキレイの3種。いずれも、尾や腰を上下に振る独特の動きをします。
原文の「にはくなぶり」は「庭で尾を振り動かすもの」という意味だそうです。英語名もWagtailで「尾を振る」。
名前の通り黄色いキセキレイ
イザナギとイザナミに夫婦和合の方法を教えたのはどのセキレイだったのでしょう?
ハクセキレイは昔は冬鳥だったので、いつでも見られたわけではなかったはず。また、キセキレイは川の上流域に生息するので、「庭で尾を振り動かす」姿を見る機会は少ないでしょう。
消去法でいくと、結論はセグロセキレイ。日本の固有種でもあり、うちの庭や屋根にもやってくるほど身近なので、イザナギとイザナミが見たのも多分セグロセキレイでしょう。
セグロセキレイ
宇治川の平等院あたりではセキレイが3種とも見られます。本来はセグロセキレイの生息域ですが、ハクセキレイが分布を拡大したこと、山が近いのでキセキレイも生息できる環境です。動画はすべて、平等院の前の塔の島公園で撮りました。
いずれにしても、セキレイのおかげ日本が誕生したわけですから、私たちはこの鳥に感謝しなければなりません。
そちらではセグロセキレイは珍鳥なんですね。図鑑を見ると、道南エリアまでのようですね。
こちらでは川沿いでは普通に見られるので、バーダーはほとんど注目しないです。
日本固有種と言われていますが、朝鮮半島の一部にも生息しているようです。
ハクセキレイとキセキレイも、図鑑によるとそちらでは夏鳥なんですね。
『魏志倭人伝』の記述を知って、中国からの使者が日本の生物多様性に関心を持っていたことが私には興味深かったです。樹木についても言及しているようです。
セキレイを見てそうした想像をする人はいるだろうなと思っていたのですが、はるか昔にいらしたのですね。
私はセキレイは大好きな鳥ですが鳥好きの人の前ではあまり声を大にして言わないほうがいいかもしれないですね(笑)。
そして日本固有種のセグロセキレイだというのは話がきれいにうまくまとまってますね。
ちなみに札幌はセグロセキレイほとんどいないのですが、まちを貫く豊平川は都心部でもまだ中流域の様相を呈していて、セグロセキレイが住む中流域は人口稠密だからいないのではないかと睨んでいます。
北海道ではセグロセキレイはいる地域には普通にいますが富良野盆地なつ地域がある程度限られているので見られるとうれしい鳥です。
でも内地では少なくないのですよね。
前に松戸の公園に12月に行くと人口水路にいて驚きました(笑)。