樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

イチローのバット

2007年06月06日 | 木とスポーツ
木とスポーツの関わりでは、まず野球のバットが思い浮かびます。
王、長島の全盛時代、バットの素材はヤチダモという木でした。導管(水を吸収する管)が太いので樹脂が注入しやすく、圧縮バットとして使っていました。ところが、圧縮バットが禁止されると、折れやすいという欠点が嫌われてアオダモが主流になります。
特に北海道産のアオダモはバットの優良材で、大リーグではホワイトアッシュのバットが主流ですが、イチローは現在でも道産のアオダモ製を使っています。ヤチダモもアオダモもホワイトアッシュもモクセイ科トネリコ属。粘り強い、反発力が高い、しなりがあるなどの特性からスポーツ用具によく利用されます。

      
             (アオダモの幹)

日本のプロ野球ではアオダモが主流ですが、最近はメープルのバットを使うスラッガーが増えています。大リーグの年間本塁打記録(73本)を持つバリー・ボンズが使ったことで知られ、日本でも阪神の金本がメープルに切り替えた年に40本打ったことで注目されました。松井も以前はアオダモでしたが、現在はメープルに切り替えています。一方、メープルのバットは硬いので、使いこなせずにアオダモに戻す選手もいるらしいです。
メープルはカエデですが、日本でお馴染みのイロハカエデではなくイタヤカエデの仲間。以前もご紹介しましたがボウリングのピン、昔のスキー板やテニスラケットに使われました。
木製バットは折れるのが宿命ですが、北海道のアオダモ産地では折れたバットを集めて供養をしたり、お箸やボールペンに再利用しています。

      
          (アオダモの白い花。栃の森で撮影)

話の本筋とは関係ないですが、10年ほど前に王さんと長島さんにインタビューしたことがあります。長島さんは饒舌でしたが、後で記事にしようとするとまとめにくい内容でした。王さんは非常に真面目な人で、質問一つひとつに丁寧に答えてくれたので書きやすかったです。
あの頃、木に関心があったらバットの話も聞いたのに。
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ボウリングのピンはカエデ

2006年07月26日 | 木とスポーツ
先日、テレビのバラエティー番組で「ジェットウォーターで何でも切ってみよう」という実験をやっていました。細い水の噴流が金属バットやビールグラスを見事にカットしていました。ボウリングのピンも縦に切られました。
番組のタレントは、ピンが硬くていい音がするのでプラスチック製だと思っていたようですが、実は木製です。私はイタヤカエデが使われていることは知っていましたが、中に小さな四角い穴が空いていることは知りませんでした。割れにくくするためと音を良くするためだそうです。

          
   (熊の爪痕が残るイタヤカエデの幹。今月初旬、栃の森で撮影)

イタヤカエデはピンだけでなく、ボウリングのレーンにも使われています。この他にもスポーツ用品にもよく使われていました。「ました」と過去形になるのは、現在は新しい素材にとって代わられているからですが、テニスのラケットや国産のスキー板はほとんどがイタヤカエデだったそうです。

      
    (イタヤカエデの葉。切れ込みが浅く鋸歯がないのが特徴)

イタヤカエデは名前の通りカエデの仲間で、少し山奥に入るとあちこちに生えています。紅葉シーズンには、赤く染まらず、鮮やかな黄色で目を楽しませてくれます。
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サッカーの樹

2006年06月14日 | 木とスポーツ
ワールドカップに因んで、サッカーの話題を。
日本には蹴鞠(けまり)という伝統のフットボールがあります。某家電メーカーのプラズマテレビのCMに、中世の装束の選手がサッカーをするシーンがありましたが、多分この蹴鞠を意識したのでしょう。

この蹴鞠のピッチを「鞠庭(まりにわ)」といいます。広さは、15m四方。正式な鞠庭には、四隅に松、桜、柳、楓を植えるそうです。
この樹を四季木(あるいは式木)と呼ぶのですが、おそらく、桜=春、柳=夏、楓=秋、松=冬を意味しているのでしょう。
さらに、ミスキックした鞠が散逸しないように、鞠庭の四方には桧の角材で作った垣を張りめぐらします。今のネットのようなものですね。

京都の下鴨神社でも蹴鞠が行われますが、正式な鞠庭ではないのか、四隅には青竹を立てています。それでも、松で鞠を清めてから蹴るそうです。

       

将軍家などの最高級の鞠庭は、四隅すべてを松にしたようです。昔は、松に神様が降りてくると考えていたからでしょう。能舞台のバックにも必ず老松の絵が描かれています。

鞠庭の樹ではないですが、近くにあるクロマツの大木を撮ってきました。民宿の敷地から宇治川まで幹が張り出し、道路を横切っています。この立派な松も、昔は神聖な樹と考えられていたのかも知れません。
私はサッカーファンではありませんが、このクロマツに「クロアチアとブラジルに勝ちますように」とお願いしてきました。日本代表には蹴鞠スピリットで頑張ってほしいですね。
コメント (2)
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