散歩中見た、畑ににょきんと伸びていた大根はあれからどうなったかフォローしていない。季節のものだけにそう長く放置はできないだろう。そんな大根、わが家は収穫直後の大根をよく頂く。お陰でいつも酢の物、煮しめ、おでん、田楽などなどで贅沢にいただいている。余ると切り干しや丸干しにして保存している。
昭和40年代半ばころまでは菜園で自家用の野菜を作っていた。大根の収穫時期は寒さと冷たさを我慢したことを覚えている。そんな苦労を多少知っているので感謝していただいている。大根や人参は大きく育てるため間引きを何度かする。収穫した大根は葉を切り取り、畑の隅に掘った穴に埋めておき、必要な時に掘り出していた。わずかな貯蔵だったと思う。
祖母は大根煮しめをよく食べていた。不思議に思い尋ねると、良くは覚えていないが「歯の調子が悪いから」ということだった。油揚げと炊いた大根煮しめは柔らかく、たべ良かったのだろう。ほかのおかずが足らなかったのかもしれない。子どもは「大根人参大嫌い」と言いながら、しっかり食べた記憶が残っている。
大根はボリュウムがあって、甘みがあって、色々な食べ方があって、家庭料理に欠かせない庶民の食を楽しませる。なのに芸の上手くない役者を「大根役者」という。役者は人気が出ると「あたる」といい、人気が出ないと「あたらない」という。大根による食あたりはめったに起きない。そこで当たらない役者を「大根役者」と言ったという。該当する役者には悪いが大根のよさを表した言葉のようだ。