春らしい温もりとは感じないが冬の寒さも少し弛んで来たかな、そんなある日だった。所用を済ませ散歩を兼ねての帰り道、定まった道順があるわけではない。表通りから軽自動車幅の細い道へ入る。次の曲がり角までの中ほどで何羽かの小鳥が隊列を組んで飛び跳ねるように動いている。よく見るとスズメと分かった。
これは珍しい光景、そう思いデジカメを出して遠くからまず1枚。ゆっくり静かに数歩近づく、スズメはまだ気づかない様子、と思った時数羽が2回飛び立った。これ以上は近づけないと思いシャッターを押した。シャッターの音は聞こえないと思うのだが、音を合図の様に全部が飛び立った。パソコンで写真をよく見ると、中ほどの1羽は羽ばたき足が地面から離れる寸前の様に見える。シャッター押しが半呼吸も遅れていたら撮れなかったと一人でニンマリしている。
ニンマリしながらある記者の駆け出しのころの述懐を思い出した。火事の取材を命じられカメラを持ち現場へ急いだ。立ち上る黒い煙を目安に走ったが、現場到時には鎮火し写真は撮れなかった。その時教えられたのは「火事取材では、遠くに見える煙でもいいからとにかく撮っておけ」、難しいことではなかった。あれこれ悩まずシャッターを切る、今は連写もできるから困らないだろう。
「スズメスズメお宿はどこだ」では心優しいスズメ、でも稲作農家にとっては害鳥という。ということで、ある村でスズメを村から残らず追い払った。翌年、米は害虫の影響で不作だった。原因はスズメが虫を捕る益鳥であることを忘れていたからという。それにしても路上のスズメはなにをしていたのだろう、宿題を残して飛び去った。