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三浦綾子『銃口 上』

2017年06月12日 21時15分40秒 | 文学
三浦綾子『銃口 上』(角川文庫)を読んだ。
このひとの『母』を読んだときも”タコ”が出てきたが、今回も”タコ”が出てきた。”タコ”というのは強制的に働かされている人たちのこと。
逃げてきた”タコ”の金俊明を竜太の父が救うが、のちに金が竜太を救うことになるというような記載があったと思う。しかし上巻が終わったがまだ金俊明は再登場しない。ほんとうに救ってくれるのだろうか。
このあたり少しディケンズを思い出した。『大いなる遺産』ってそんな話じゃなかっただろうか。
三浦綾子はちょっと馬鹿にしたくもなるけど話に惹き込まれるというところもディケンズを思わせる。
坂部先生と木下先生はとても立派な人物で、このような人物をみると自分の生き方を反省させられるし、このように生きていかなければならないと思わせられる。ふたりともキリスト教を学ぶことによって立派な人物になっていると読めるところがあり、三浦綾子はなかなか狡猾だ。勧誘できている。

木下惠介の『二十四の瞳』にも歌の上手い子どもがみんなの前で、せがまれて歌う場面があったが、この小説でも歌の上手い主人公の竜太がみんなの前で歌う場面がある。
歌の上手い子がクラスで歌って、それでみんなが感動するということが、五十年前とか百年前にはあったのだがいまでは考えられない。

竜太が警察になぜか理由はわからぬが捕まってしまうところで上巻は終わり。
カフカの描くような世界観って、想像力の豊かな作家の描く非現実的なもののように思いがちだが、じつはそんな世界はほんのちょっと世の中が傾けばすぐに目の前にあるということなのだろう。
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