ダブログ宣言!

ひとりでするのがブログなら、
ふたりでするのがダブログ。

沢木耕太郎『流星ひとつ』

2015年12月06日 21時22分07秒 | 文学
沢木耕太郎の『流星ひとつ』(新潮社)を図書館で借りて読んだ。
少し前に沢木耕太郎のものをいくつかまとめて読んだことがあったが(『ポーカー・フェース』、『貧乏だけど贅沢』、『チェーン・スモーキング』、『246』)、しかし思い出してみると読もうと思ったきっかけは藤圭子が自殺し、そのあと少ししてから沢木耕太郎が藤圭子にずっと昔にインタヴューしていたこの本が出て、最初のほうを見ると会話文のみで書かれていて興味を持ったのだった。
買うほどではないと思って放っておいたが、また沢木耕太郎が読みたくなって図書館で借りた。

とてもおもしろい本だった。文庫になったら手元に置いておきたい。
藤圭子は、宇多田ヒカルの母親という認識しかなかったが、この本を読むとものすごく近しい存在に感じる。
藤圭子が、無意識で歌っていたときは何ともなかったのに、喉の手術をして自分の声が変わってしまってからは歌うことを悩み始めたという話がおもしろく、それに対して沢木耕太郎が、長く同じ仕事を続けていればいつかはそういう時期がくるものでそれでやめてしまうのであれば若いうちしか仕事ができないということになってしまうという意見(だいたいの要約です)もおもしろかった。意見の違いがあるときに、沢木耕太郎の意見が結局は正しいというようには読めなくて素晴らしい。
また藤圭子の家族が父親から暴力を受けていたという話も印象に残った。戦争に行っていた父親は軍隊で殴られたので家族を殴るようになってしまった、そういう病気なのだ、ということを藤圭子が言っていた。
藤圭子が前夫の前川清をとても褒めていて、前川清が歌がうまいと何度も言うのだが、私自身は前川清の歌がいいと思ったことが一度もないので、そういうものかなと思った。しかし前川清が歌が上手いという話は以前誰かが言っていたと記憶しているので(福山雅治かな?)、上手いのだろう、たぶん。

とにかく、芸能の世界に生きるのはたいへんなのだなと思った。
コメント