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橋本治『小林秀雄の恵み』読了

2011年03月29日 00時04分18秒 | 文学
橋本治『小林秀雄の恵み』(新潮文庫)を読んだ。とても長い本だった。小林秀雄に興味があるから読めたが、小林秀雄にも本居宣長にも橋本治にも興味のない人にはこの本は読めないだろう。当り前だけれど。
本居宣長が「私はこう思いますけど、皆さんはどうか知りません。好きにしてください」というような態度で、ドライな人だなと思い興味を持った。
《本居宣長は、「悲しいことをただ”悲しい”と受け入れたい」と思い、「なぜそれをさせてくれないんだ」と思い続けていた人なのである。》(470頁)という部分に最も感動した。
小林秀雄は、本居宣長が「悲しいことはただ悲しい」と言っているのを、知性で理解して、心では分かっていない(「心で分かる」という言い方も違うように思うが)のではないかと自分でも不安に思っていたのではないかと、橋本治が言っているところに感心した。

小林秀雄の「当麻」に始まる『無常といふ事』と、講演録「歴史の魂」を読んでみようと思った。

この本(=『小林秀雄の恵み』)は近世と近代について考えさせる本だった。このような、歴史を感じさせる本はよい。テレビを見ていると近視眼的に今の世のことしか考えられなくなってしまうので、ちょうどよい。SFに興味を持ってしまっているのも、そういうこのところの情況のせいかもしれない、とも思う。

小林秀雄の本はトンネルで、読者をどこに導くかは読者次第だというようなことを最後に橋本治は書いていたが、橋本治の本も同じようにどこに連れていくかわからないところがある。内容はなかなか難しく、ところどころ感心することもあったはずなのに、読んだ後にはすっかり忘れてしまうのもいつもと同じだ。しかし何かを通り抜けたという気持ちにはなれる。
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