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☆批判に耳をすます

2009年10月29日 00時12分49秒 | 文学
自分への他人の批判というのは相当に注意深くしていないと聞き逃してしまう。
これはひとによるのかもしれないけれど、私はそういう人間だ。
何度も言われて、やっとそういうことを言われていたのかと理解できる(ことがたまにある)。しかしそこまで執念深く言ってくれるのは妻ぐらいしかいない。

大江健三郎の「取り替え子」はやはり凄いものがある。毎日、おもしろい、おもしろくない、と言うことが変わるが、やはり全体を通せばおもしろい。
吾良(伊丹十三がモデル)に、これまで大江健三郎の小説に対して言われてきたすべての批判を言わせる。
《ところが古義人はさ、考えてみれば驚くべきことだが、この三十年ほども、読者のことを考えて主題と書き方を選んだ形跡がない!》(220頁)
《きみが理解しなければならないのは、いま書いている小説を出版する時、本屋に来る読者はひとつ面白そうな小説を探しているのであって、古義人の新作をあてにしてはいないということだ。古義人の全作品を読んで、次作を待ちかまえている読者など、あったとしても稀少例だよ。》(221頁)
こんなことを平気な顔して(わかんないけど)言わせている大江健三郎はすごい。しかも特に弁解もしていない。
なんだかすげえ小説だ。
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