川村記念美術館の至福

2004-09-20 17:06:43 | 美術館・博物館・工芸品
2d3f036b.jpg川村記念美術館は千葉県佐倉市の郊外にある大日本インキの総合研究所の敷地内に建つ。洋風庭園の美しい湖面に二階建てのシルエットを写す。川村を冠するのは大日本インキの創始者に因む。永年のコレクションを集め美術館として展示したというが、あたかも美術館になることを念頭に入れて収集したとも思えるほど、バランスのいい作者や年代の構成である。

個人コレクションとしては、以前(8月23日)に紹介した松下電工のルオーコレクションのように一人に絞った収集もあるが、川村コレクションのように美術館の常設展が開けるような集め方もある。松下同様大日本インキ社も会社が傾いたときに換金しようと考えていたわけでもあるまいが、仮に、その場合には他数の画家に分散した方が有利だ。

一階は常設展で、レンブラント、モネ、シャガール、ブラックなどの小品が多数。コレクションの密度は高い。できれば第一展示室は、もっと小部屋仕立てにして、気持ちを集中して鑑賞したいところだ。名画が多くて目が移る。行きつ戻りつしてしまう。

二階は企画展。ロバート・ライマン-至福の絵画- 美術は「生(なま)」に限るというのは、まさにライマンのためのことばかもしれない。ネット上の画像や紙面上の二次元情報では感じられない空間に芸術性を感じる。白をあやつる画家という表現は月並み過ぎるだろう。広い空間の壁面の作品群と、その絵の具の臭いまでもが、彼の作品感なのだろう。画家としての彼がそこにいても至極自然だろう。
アジアの若い芸術家たちに対しても同様だが、現代は「同時代作家」を評価していく時代なのだろう。人生と芸術を一体化させて行けば、当然そうなる。常に当代きっての画家でありながら、絶えず画風を変えていったピカソが代表だ。しかし、「同時代性」は一歩誤れば単に流行アーティストに陥る危険はあるが、間違いなく時間が淘汰してくれるだろう。

一方でゴッホを代表として、死して初めて大量の絵画が世間に広がっていくケースだってこれからもあるだろう。それも一つの普遍性がある。芸術は「商売」ではないから一枚が完成することで完結し、そこから先はおまけという考え方だ。

ただし、佐倉市は遠い。千葉県の住人でないとなかなか辿り着けない。私は茨城でのゴルフの帰りに近隣に一泊し、国立歴史民族博物館と一緒に訪れたのだが、気軽にいけないのが残念だ。


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