横浜B級ラビリンス(山崎洋子著)

2024-06-26 00:00:30 | 市民A
横浜に関係する本を少しだけ読んでいて、今回は『横浜B級ラビリンス』。



江戸川乱歩賞受賞作家の山崎洋子氏の著(豊子ではなく洋子です)。舞台は横浜の余毛となっているが、誰がどう読んでも余毛=野毛(のげ)。野毛と書いてもいいではないかと思う。大道芸の話もあるし。野毛と言えば迷宮都市なのだからラビリンスという意味。9編の短編小説集。

野毛は桜木町駅の西側で、東側はみなとみらい地区。日本有数の観光地で、なぜか外国人はあまりいない。野毛の町だが、迷宮化したのは戦争後。横浜にあふれていた米兵や麻薬中毒患者や孤児がたくさんいて、少しずつ町らしくなってきた現在でも、かなり近寄りがたい雰囲気が漂う。

本書に描かれたのはその中でも本当に狭い地区で、よく登場する『白眉』という中華料理店もモデルは『万里』という店ではないかと言われる。

また、ミステリ作家らしく、短編の総てに謎解きが入るが、世間によくある詐欺とか不倫とかギャンブル地獄とか単発事件簿である。だいたいどの短編でも一人は死者があるが大量殺害事件ではないので安心して読める。

個人的には知人と米兵とのハーフの子を引き受けて育てた「いつか王子様が」と一流企業の女性営業課長になりすまして大道劇に出演して一時の心の安らぎを得た「芝居の時刻」の切れ味が好きだ。

まあ、あの町に住んでいれば、無数のドラマを目にしたり耳にしたりすることが多いだろうと想像できる。昭和20年から連続して時間が流れ、今日に至った町だ

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