宿屋の仇討ち(演:桂伸治)

2024-06-24 00:00:00 | 落語
NHKの日本の話芸。NHKホールでの収録。

元々は上方落語だったそうで、話を江戸に置き換えている。場所は東海道の神奈川宿。現在の東神奈川駅のあたり。落語並みにおかしな話だが、そのあたりの現在の地名は、神奈川県神奈川区神奈川。確か、兵庫県兵庫区兵庫という地名もあると聞いたことがある。

さて、武蔵屋という宿に泊まっているのが、一人の武士。隣の部屋には威勢のいい町人衆が三人。これがうるさくてしょうがない。最初は芸者を入れて飲めや歌えや。武士は手代に文句をつけ、注意をすると、「侍を怒らせたら怖い」と静かになるが、次は相撲の話になって盛り上がり、部屋で相撲を始め、武士は手代を呼び二回目の文句を付ける。手代は再び三人衆に注意をし、再び静かになるが、今度はおとなしく色事の話を始める。そして権兵衛という男は極め付きの話を始める。

三年前に川越に行っていた時に、武家の奥方と懇ろになって通っているところを武家の弟に見つかり切られそうになったが、逆に殺してしまった。逃げようとすると奥方が、私も逃げると言い出し、秘蔵の三百両を持っていこうとしたため、それを奪った上、逃走の足手まといになると奥方も切り殺してしまい、三年経っても追っ手はこないと、自慢話を始めた。

一方、武士は手代を呼び、私は川越藩の武士で、妻と弟を三年前に殺され、賊を探す旅に出ていたが、本日、ついに仇を発見した。隣室の男と二人の友人を斬ることことにしたが、ここで決行しては宿に迷惑がかかるので、明朝、町のはずれで切ることにするので、今夜は絶対に逃がさないようにしてほしい。一人でも逃がしたら宿屋の使用人を皆殺しにすると、宣言。

慌てた手代は、店の中で血柱が立っては困るので、三人衆に事情を話したうえ縛り上げてしまった。どうも、飲屋で聞いた話に脚色して喋っただけらしいが、武士は聞く耳を持たず、朝まで高枕で爆睡。

そして運命の朝。手代が武士の部屋にいき、隣室との襖を開け、縛り上げられて泣いている三人と対面することになるが、

これらは何で縛られているのだ。ということになる。手代が昨夜の仇討ちの話をすると、あれは嘘だ。おかげで良くよく眠れた。ということになる。


落語の中で嘘をつくはなしはたまにあるが、実は難しい芸だろう。嘘には思えないように話す場合と、嘘をついて相手を騙しながら、観客には嘘をついていることがわかるような場合もある。


本演目では、武家の方は観客をも騙すような嘘をつくわけで、なんとなく、オチの後、気持ちが落ち着かない。