ハデスとゼウス(『ギリシア神話』の兄弟)

2010-09-08 00:00:24 | 書評
新人物往来社のビジュアル版『ギリシア神話』を読む。副題が、「神々の愛憎劇と世界の誕生」となっている。ギリシア神話に登場する多数の神様の相姦図といったところだろうか。



もともとギリシア神話は、半島国家であるギリシアをめぐり次々と襲来した代々の征服者たちの物語を神になぞらえて語ったものと考えられている。完成まで数千年かかったともいわれ、神々の出生の秘密が明らかにされる時期から、実際にあったと考えられているトロイア戦争までが対象期間である。

そして、神話の解釈はきわめて多種類で、読む人それぞれに勝手に解釈してよいことになっている。だから、ここに書く話だって、別に、おかしくても気にしないでほしい。ただの素人で、ギリシア人必読の「イーリアス」「オデュッセイア」(ホメロス作)も「神統記」(ヘシオドス)も読んでいない。数冊の解説書を読んだだけなのだから。

そして、本著は、ギリシア神話を、ただのポルノのように解説しているわけだ。頭の中がセックスだけの神様が多数登場するし、まあ、近親相姦はざらに起こり、結果、一つ目の神様や巨人と化した神様も登場。だいたい、実の母親が息子の子供を産む話などがあちこちで起こる(本著には書かれていないが、古代アテネでは、男子は35歳になると15歳の女子と結婚するため、女性が女盛りの30歳になった頃、既に夫はボロボロで、つい若い息子に手が出るらしい)。

また、全能の神と言われるゼウスが、特に好色漢だったらしく、本書末尾の複雑な相姦図を解読すると、14人の女性と関係しているようだ。タイガー・ウッズみたいなタイプだったのだろうか。特に姉妹や従姉妹との関係が好きみたいだが、叔母さんともやっているし、人間界の美女も大好きだったようだ。

ゼウスが美女エウロペを誘拐監禁して妊娠させる話は、古来、絵画の題材に使われてきているが、野原で遊んでいたエウロペの近くに、牡牛が歩み寄ってくる。ゼウスが牛に変身して美女を安心させたわけだ。



そして言葉巧みに背中に乗せるやいなや、猛烈な高速で走りだし、海を高速艇のように進んで離島に連れ込む。そして、無理やりコトに及んだ末、妊娠させてしまうわけだ。そして、ポイ。こどもはクレタ島のミノス王になる。(よくあるパターンの話だが、コトに及ぶ時に、うっかり動物の姿のまま交わると、半人半獣が生まれたりするわけだ。ペガサスなんかそれだ)


一方、ゼウスには何人もの男の兄がいるのだが、兄たちの大部分はゼウスに頭が上がらない。ゼウス兄弟の父親は“ろくでなし”で、生まれたこどもを全部食っていた。こどもに殺されると占いの結果を知っていたからだ。ゼウスの母親は、これ以上こどもを食われたら大変なので、ゼウスを隠して育てていたわけで、結局、ゼウスによる父親征伐の結果、食われて姿を消していた兄たちを救出したわけだ。たとえばポセイドンも救出された一人で、海の支配者となる。

そして、兄の一人が、ハデス。冥界の主となったわけだ。だから、かなりコワモテである。もちろん冥界を訪れた者は、基本的には冥界から出られない。当時、AEDは発明されていなかった。ただ、「どうしても」とゼウスに裏口から頼まれると、時々、特例を認めて、天上または地上に戻してやったりしている。



そしてハデスもゼウス同様に女好きで、姪にあたる美女神を。こちらも野原で誘拐して、冥界のある地下室に押し込んでしまう。ただ、ゼウスが牛に変身して姑息に近づいたのに対して、ハデスは単純明快。番犬を連れて地上の野原で花を摘んでいたぺルセポネを襲撃。あらわな肌に食い込む誘拐者ハデスの指や、乙女の涙、そして冥界の番犬。彫刻家ベルニーニの作品は、犯行現場の状況を大理石を使い見事に再現している。


まあ、そういうことで、犯行手口にしても、陽気なゼウスと陰湿なハデスというのは対照的と言えるのだが、なんとなく某与党のドンを、冥界の番人であるハデスと、重ねて考えてみたくなるわけだ。


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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2019-06-03 02:04:57
相姦図て。。
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