家守綺譚(梨木香歩著 ファンタジー)

2018-12-20 00:00:20 | 書評
『西の魔女が死んだ』の著者が明治時代の京都の旧家を預かった時の怪奇現象を綴った作品。読み始めてからしばらくは、現実と怪奇の落差に留まるが、要するにファンタジーであると理解したら、楽しく読めるわけだ。サルスベリの木がこの庭の中心生物であることがわかり、掛け軸の裏からは、湖に沈んでしまった友人が現れるし、庭の池には巨大な鯉がいるとともに河童が住んでいた。

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その他の重要人物は、臨家のオバサンとどこからか現れたゴローという犬。庭の珍しい動植物やムカデを集めて転売することを生業にしている長虫屋、なんでも知っている怪しい和尚。

そして、一人称で本作品を書いている男は、一応、原稿書きを職業としているが、周囲の誰からも、犬やムカデやキツネやタヌキや河童からも「無知な生物」と思われていて、立つ瀬がない状況だ。作者の実際の庭がモデルになっているそうだ。

要するに庭を造り維持するために植木屋の自己満足みたいな剪定をしてはならず、植物はそれ自体が伸び伸びと成長できるようにしてやることと、むやみに昆虫や小動物が住めないようにしてはいけないということだろう。そういえば、先日、蜂に刺される夢を見て激痛で自分の声に驚いて起きてしまったが、何らかの危険接近アラームなのかもしれない。

文庫本で180ページと長くはなく、この10倍位長いともっといいのだが、それよりは著者の別の本を読んだ方がいいのだろう。

ところで、作者の名前である香歩だが、女流棋士のような名前だが親が将棋好きだったものと想像できる。


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