スタバのある街、ない街

2006-10-19 00:00:48 | マーケティング
ddfb938e.jpgスターバックスが日本に上陸して10年経つ。10周年の記念品のうち、アニバーサルマグ(1200円)を入手。渋めの臙脂色を背景として、二股シッポの伝説の人魚「サイレン」が金色とプラチナ色の輪郭で描かれている。ロンドンの金庫に預けている金とプラチナの価格がさらに上昇することを密かに祈ってみる。

さて、日本上陸第一号店は、銀座の松屋通り店で1996年8月2日のオープン。その後、着実に店舗は増加し、630店を超えている。日本市場はシアトルの本家にとって最初の海外進出だったのだが、結局、大成功。日本で開発される各種多様なメニューは、その中からいくつかは世界に広がっていく。要するに、日本のユーザーはまったく飽きやすいし、次々にスタバ類似カフェが開店していくのだから、常に商品やサービスを見直さなければならない。巧まずして世界アンテナショップの役割を果たしている。

ddfb938e.jpg元々、アメリカでスターバックスは都会の「サード・プレイス」という言われ方をしていて、自宅でもなければオフィスでもない、別のくつろぎの場所、というスタイルだったのだが、東京都内にあふれるスタバとその利用者の実態からして、どうもファースト・スペースではないかと思っている人も多そうだ。結構、1日3時間くらい複数のスタバをはしごする人もいて、例えば、虎ノ門の近くには半ダースも店があるのだが、「あそこのスタバはAさんのシマ」「こっちのスタバはBさんのシマ」とか応接室がわりの人もいる。

10周年記念を祝うため、来日したCEOのハワード・シュルツ氏のテレビ東京とのインタヴューを見たが、アメリカのビジネスマンらしくなく、1950年代の映画に登場するクルマのセールスマンのようなアットホームなタイプだ(とはいってもMBAだろうが)。アップルとの提携については、「何も言えない」ととぼけていたが、色々なプランを交渉中なのだろうと感じた。目標店舗数は世界30,000店を40,000店、日本の630店を2,000店にしたいと語っていた。


ところで、このスタバ1号店がオープンした1996年頃、日本で大拡張していたチェーンがあった。

”ユニクロ”だ。

1984年に1号店が広島にオープンしてから10年間はゆっくりした増加を続け、1994年に100店。ここから急成長を始めて97年に300店、2001年には500店を超える。この96年頃は首都圏中核都市を中心に徐々に郊外に膨張していた頃だった。そして、当時、そういう郊外都市では、ユニクロ膨張の中で、あるステータスが言われていたのである。

ddfb938e.jpg「ユニクロのある街」。

要するに、バブル崩壊後、都市商業機能が低下しつつあり、ユニクロが出店する街は、若さがあり、文化があり、購買力がある人気度の高い街、とされたわけだ(実際は、ユニクロは激しく出店する一方で売れない店は、あっという間に閉店したりして、要するに、若いとか文化とか無関係に、儲かる店が残っただけなのだろうと思う)。学校などで、同じような地域に住んでいる生徒のグループ内でも、微妙に徒歩圏にユニクロがある都会派が、郊外派を差別していたりしていた。

そして、現代。街の文明度を決める新しい尺度ができたわけだ。

「スタバのある街、ない街」。

ご存知の方も多いだろうが、スタバ(日本)は県別に「ご当地マグカップ」を発売している。これを集めている人は多いのだが、そう全国を歩けるわけでもないので、知人に頼むのであるが、地方都市の場合はなかなかうまくいかない。何しろ、地方都市には少ないのである。ところが地方都市というのは、思いのほか広いのである。元々所用で出張する方に、あらかじめスタバ所在地の地図を渡して頼むのだが、不首尾に終わることが多い。

では、地方都市の人は、スタバが少ないということをどう思っているかなのだが、少なからずコンプレックスを持っているのではないだろうか。そんな気がする。

実は、直近の店舗配置を県別に調べてみた。そして、元祖文明尺度だったユニクロの県別店舗数(現在)と並べてみると・・・

両社の店舗数は、いい勝負なのである。スタバ639店、ユニクロ730店。一店ずつの規模が違うので、いずれスタバはCEOがいうように3倍になるのかもしれないが、多くの面で配置が似ている。ただし、東京ではスタバが211店、ユニクロ91店と大きく異なるが、これはスタバは昼間人口をターゲットにしているのに対し、ユニクロは夜間人口をターゲットにしているからだろう。いわゆる都市部といわれる埼玉、神奈川、千葉、愛知、京都、大阪、神戸、福岡の店舗数は奇妙なほどそっくりだ。

一方、細かく見ると、東北でユニクロが多いのは、寒いところは衣料品がよく売れる、と単純に考えるべきなのだろう。また、北関東、中部圏はスタバが成長中のように見える。西日本はいくつかの中核都市だけに出店し、他は市場として捨てていることがわかる。北海道も13店中、札幌市以外は2店しかない。そしてなぜか狭い沖縄には多い。

そこで、今後639店が2000店(約3倍)に増加するなら、どういう配置になるのだろうか、と考えてみると・・

おそらく、全国くまなくという展開ではなく、現在の比率のまま3倍になる、というような展開ではないかと思っている。それでは、現在が0店の場所では3倍しても0のままで、いつまでたっても「スタバのない街」ではないか、と言われれば、たぶん、そういうものなのではないだろうかと思ってしまうのだ(なかなか株価の上がらないスターバックス・ジャパンの泡沫株主の一人としての予想ではある)。


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