コククジラ親子の悲劇

2018-08-05 00:00:50 | 美術館・博物館・工芸品
品川にある「東京海洋大学マリンサイエンスミュージアム」という長い名前の大学内博物館の付属施設に『鯨ギャラリー』という建物がある。一見すると温室なのだが、鯨の骨格標本が二体並んでいる。何しろ大きいし、ガラス張りなので暑いし、さらに骨と言っても有機物質なのでそれなりの匂いもあるので長居は困難なので、撮影だけして記録した。

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向かって右にあるのがセミクジラで太平洋、大西洋の北部に生息して主にアメリカが19世紀末に大量捕獲してしまい激減したまま。全体で1000頭程度の生息で増加の兆しがないらしい。1937年に国際的に保護されたそうで、展示骨格は、1961年に日本国の特別調査でアラスカ沖で捕獲された雄で体長は17.1mである。

そして、向かって左の骨格が本日のメインテーマで、コククジラである。太平洋の北側で生息しているが、北米側はベーリング海からカリフォルニア沖の間で回遊しているそうで30,000頭はいるようで、特に絶滅の危険はないのだが、アジア側はオホーツク海と中国の海南島の間を回遊しているが120頭程度しか確認できないそうだ。まさに絶滅の瀬戸際だ。

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骨格標本は、たまたま宮城県の女川沖の定置網にかかったコククジラ母子のうち母クジラ(体長12.8m)の方だそうだ。

そして子クジラ(体長7.8m)の方だが、2009年に宮城県石巻市の『おしかホエールランド』に譲られ、骨格が展示されていた。同所は石巻が捕鯨の街であったことから設置され各種のクジラ(特にザトウクジラ)展示が有名だった。

ところが、子クジラの骨格が送られてから1年半で東日本大震災が発生し、ネット上で調べた限り、ホエールランド全体が津波に襲われることになった。実は、展示品がどうなったかは確認できないのだが、昨年(2017年)になり、復旧計画が進み始めたようだ。

もっとも海の生物が不幸にも網にかかって命を落とし、その骨格が数奇な運命をたどったのちに、ほぼ元の場所で海に還ったとしたなら、一つの物語の完結なのだろうか。骨になっても強く海に帰りたいと思ったのだろうか。


ところで、石巻には、もう一つの親子物語がある。「史上2番目に長い敵討成就の地」である。記念碑が立っている。新発田藩の武士が殺されてから41年で、実子によって仇討ち(幕末1857年)が成功したという。その経緯はあまりに人間的な話なので、本稿には詳細は書かないが、いずれ、二つの悲しい親子の物語の地を見に行きたいなと思っている。


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