朝鮮(金達寿著・岩波新書)

2013-10-30 00:00:47 | 書評
今や、朝鮮半島の歴史のことについて、正常な精神で研究する人などいるのかどうかわからないし、20世紀から始まった国でもないのだが、19世紀より以前の歴史について書かれたものを少しずつ読もうかと思い、昭和33年のこの本を開いてみた。おそらくは、著者は当時、やや北寄り思想だったのかもしれないが日本にいる以上、北の指導者が何を画策していたのかは知らなかったのだろうし、もちろん、それから50年経って、こんなことになるとは、思わなかったのだろう。

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ただ、本書は、現代史について割かれたページは、そう多くなく、大部分は朝鮮半島に古来から流れる朝鮮史についてである。

で、内容については読む人によって色々と感じることが違うのだろうから、あえて触れないが、思うに、「中国に対する態度」「半島内の統一抗争」「時々起る日本など他国からの攻撃」という基本パターンがあるのだろう。さらに、中国や日本よりも政権交代の期間が長いため「政権内部の腐敗や社会の封建性」が加わり、それらの重力バランスによって歴史が進んでいるわけだ。

統一国家としては、新羅、高麗、李氏朝鮮の3つしかない。(日本はその間、政治権力は、色々と変っているが、統一国家は続いていると見るべきか、少し言い難いところはある)

もっとも、よく考えると、上記三つの政権はいずれも日本と一戦(あるいは二戦)を交えている。中国の脅迫外交にはいつも屈している。政権を長持ちさせるために、思想教育をしたり、差別的階層身分制度をつかったり、早い話が「美しい国」ではなく「悲しい国」なのだろう。

もっとも、中国に近いために、紀元前の頃からの歴史が資料(文字)として多く残っているわけで、資料不足のため(あるいは何らかの理由で古墳を未公開にしているため)日本の古代史(つまり大和朝廷成立史)は霞がかかったように不明瞭なのだが、こちらにも「悲しい歴史」があったには違いないだろうと思うわけだ。