謎の深い「深川めし」

2013-10-04 00:00:31 | あじ
東京駅は商業施設が次々にオープンして、特に駅弁を選ぶ楽しみは、旅立つ人の最初の楽しみになっている。

が、旅ではなく単に「あちこち移動」する人にとっては、昼食時、夕食時を新幹線内で過ごすしかないためのエネルギー補給という意味しかなかったりする。

そして、ちょうどそういう後者のシチュエーションにあたったのだが、残念ながら人だかりの中に列を作って人気弁当を買う時間がなかった場合、・・

旧来型の駅弁ステーションで、定番メニューを買うしかないことになる。それで、新幹線改札の中に入り、かねてより気になっていた「深川めし」を購入。値段は3ケタ。消費税が15%になると1000円を超えるだろうか。江戸深川の名物である。

fukagawameshi


で、あさり入りの炊き込みごはんに、さらにアサリをトッピングし、アナゴの焼物とハゼの甘露煮がのっかる。付け合せが小茄子の余市漬と大根のべったら漬、刻み油揚げの煮物。

予想していた味より、旨い。アサリが小ぶりだが、それが柔らかさの原因かもしれない。アナゴは固く仕上げられていて、車中で箸の間で砕けることはないだろう。

そして問題というか深い謎は、ここから先。「二つの深川めし」の件。

このエントリ書くに際し、少し調べてみると、東京駅の駅弁として売られている「深川めし」には二種類あることがわかった。

私が食べたのは、新幹線改札内にあるもので、JRCP社のもの。JR東海パッセンジャーズという会社でJR東海の子会社で、日本食堂から分離した会社である。もう一つの深川めしはNRE、日本レストランエンタプライズ社のもので、弁当の内容が僅かに異なるようだ。

つまり、二つの「深川めし」。

そして、さらに謎があるのが、この「深川めし」の形状。簡単にいうと「アサリ炊き込みご飯」であるのだが、本当の深川めしは、まったく違うもの、という説がある。ようするに白いご飯をどんぶりに入れて、あさり汁をかけたもの、ということらしい。つまり漁師めし。

つまり、二つの「深川めし」。

ただ、汁物では駅弁になりにくい。液体ものだと、せいぜいカレー程度の粘度は必要だろうか。ネットで調べると、この流体化した深川めしを食べに行く人の苦労が書かれていて、まず、「深川ってどこだ」から始まるわけだ。実際に深川という名の地下鉄駅はないし、何しろそういう公式住所はない。しかし、深川小学校はあるし深川中学校もあるし、深川神社もある。情が深いと言われた深川芸者はどこにいたのか。そういえば松尾芭蕉は深川にも住んでいた。東京には吉原や山谷のように有名だが存在しない町がいくつもあるようで、その一つだ。どうも、前は門前仲町周辺を深川と言っていたようだが、各種地下鉄が開通したため、清澄白河駅周辺の方が深川色が濃いようだ。

つまり、二つの「深川」。

以前、東京都現代美術館に行った時に、ずいぶん「深川めし」の看板があるなあと思っていたのだが、どうも美術館の周辺が、本場らしい。その時に暖簾をくぐっていればよかったのだ。

そして、二つの「深川めし」の探求をした人たちが驚くことが決まっていて、今や汁物の深川めしは「深川丼」と改名しているらしい。つまり「炊き込みご飯」が「深川めし」の商品名を奪ってしまったようなのだ。

そして、じっくり深く考えてみると、この「汁物深川めし」と「炊込深川めし」の商品名争いの決着を付けたのが、駅弁に採用されたかされなかったか、ということではなかったのだろうか。

冒頭に書いたように、今や東京駅では鉄道系二社に限らず、新たなショップがさまざまな弁当を販売しているわけだ。第三の「深川めし」があるような気もするし、なければ、「汁物の深川めし」を新発売して、商品名の奪還をはかることもできそうである。そうなると、現在の炊込み深川めしはどうなるかというと、「深川弁当」とかなるのだろうと推測。