美しい魂(島田雅彦著)

2011-12-28 00:00:00 | 書評
「無限カノン」シリーズⅡ。

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第一部「彗星の住人」で、蝶々夫人から始まる野田家の脈絡に頭が慣れた段階で、読み進むスピードがアップしてくる。蝶々夫人とピンカートンとの間に生まれたのが、ピンカートン・ジュニア。日米間でスパイ活動を行いながらもアイデンティティに苦しむ。そのこどもが売れない音楽家の野田蔵人。マッカーサーに一杯食わせる。

蔵人の子供がカヲルだが、両親が亡くなった後は常盤家に養子に入る。大商社の家系である。姉のアンジュと関係してしまうが、本命はアンジュの友人の才媛、麻川不二子。カヲルは国連職員になった不二子を追いかけるため、特殊な声を開発してオペラ歌手になる。

そして、この二人は奇妙な約束を交わしながら、ついたり離れたりしているうちに、不二子は皇太子妃の候補者となってしまうのだが、その間もカヲルはあっちやこっちの女性の間をフラフラしてしまうのだが、要するにカヲルは源氏物語の世界にいるわけだ。

そう、カヲルは薫君ではなく光源氏であり不二子は藤壺の宮ということなのかもしれない。

そして、あれこれの陰謀や画策の末、不二子は皇太子妃となり、その後、20年近くが経過し2015年になって、行方のわからないカヲルをさがすため、カヲルの娘である椿文緒がアンジュを探し出し、長い物語を聞くところに戻り第一部の冒頭に戻るのだが、では第三部はどこから始まるのだろうか。