セガンティーニ(アルプスの画家)展

2011-12-25 00:00:04 | 美術館・博物館・工芸品
損保ジャパン美術館で開催中のジョヴァンニ・セガンティーニ展(~12/27)。冬の寒さの中でアルプスの景色を見るのは時節違いかなと思ったが、本来、初夏に予定されていたものが東日本大震災の影響で半年遅れとなったそうだ。

セガンティーニが人生の後半(といっても1899年に41歳で病没している)に描いたのはスイスアルプスの自然と人の融合というテーマで、いかにも固いのだが、実は、幼年期はまったく逆の問題児だったそうだ。

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彼は北イタリアの生まれで、幼くして両親と死別し、施設で過ごしているうちに、悪の道に染まる。そして収監されたのが少年院だった。そこで、何の偶然か画才を見出されることになる。ただ、見よう見まねでイタリアンスタイルの赤、こげ茶、金色とか使ったいかにもクラシカルな風景画や肖像画を描いて収入としていた。

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そのうち、屋外に出るようになり、暗い空よりも明るいアルプスの空を求めてスイスに移住する。さらに母性、生、死といった根源的なテーマの象徴主義へ向かっていったということだそうだ。

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なんとなく生い立ちから始まり、41歳でアルプスで亡くなるまで、吉村昭の筆で小説化してもらいたいなあと思ってしまう(もちろん無理)。

腹膜炎で亡くなったそうで、彼の最後の数日を看取った友人の手で肖像画が残っているが、顔色からは生気が失われあきらめの表情になっている。大腸がんだったのだろうか。美しい絵を描いたからといって美しく死ねるわけでもなさそうだ。