三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

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「韓日首脳の友情の代価」

2024年10月02日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2024-09-10 10:17
■韓日首脳の友情の代価【コラム】

【写真】6日午後、尹錫悦大統領が韓国を訪問した日本の岸田文雄首相とソウル龍山の大統領室で、韓日首脳会談に先立ち握手をしている=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 退任を約1カ月後に控えた日本の岸田文雄首相が週末に韓国を訪問し、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と首脳会談を行った。2021年10月4日に首相に就任してから12回目の韓日首脳会談となる。
 約3年間の首相の任期を締めくくる外交日程として韓国訪問を選ぶほど、岸田首相の韓日関係に対する関心は格別なようにみえる。岸田首相は先月14日に次期自民党総裁選への出馬を断念し、事実上退任する意向を表明した記者会見で、「日韓関係の改善とグローバルサウスとの関係強化」を自身の「大きな成果」だと自負した。
 岸田首相の自負には理由がある。経済中心路線で有名な派閥である宏池会(岸田派)の会長だった岸田首相は、就任直後に「新しい資本主義」をアピールして、自分だけのカラーを示すかに見えたが、任期中に目立った経済成果はなかった。
 しかし、外交安全保障分野では、日本の憲政史上最長となる首相在任記録を打ち立てた安倍晋三元首相でさえ果たせなかったことをやり遂げた。代表的なのが韓日外交関係で、韓国の一方的な譲歩を取りつけたことだ。尹錫悦政権は昨年3月6日、両国間の重要争点である韓国最高裁(大法院)の強制動員被害補償判決の問題について、日本の加害企業の代わりに韓国の日帝強制動員被害者支援財団が賠償金を支給する「第三者弁済案」を発表した。日本政府は、最高裁の強制動員被害補償判決が1965年の韓日基本条約と請求権協定に違反しており、日本企業の賠償金支給は決して受け入れないと主張し続けてきたが、最終的に日本企業が賠償金を支払わない案を尹政権が持ってきたのだ。尹政権は日本の「誠意ある呼応」を期待すると言っていたが、呼応はついに来なかった。10日後の3月16日に東京で開かれた韓日首脳会談に合わせ、韓国と日本の企業から財源を集めて人材交流や産業協力の強化を行うとする未来基金が急きょ設立され発表されたが、この基金は強制動員被害とは何の関係もない。当時、岸田首相は首脳会談後に「1998年10月に発表された日韓共同宣言を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」と述べたが、強制動員被害に対する具体的な言及はなかった。
 3カ月後の6月に日本は、半導体素材などに対する対韓輸出規制をすべて解除したが、これも「呼応」ではない。輸出規制は本来、日本政府が公式に強制動員判決とは無関係だと主張してきたものだ。
 尹政権が韓日関係改善と韓米日安全保障協力を優先視し、過去の歴史をほとんど問わなかったことで、岸田政権はこれを新たな標準として固めるよう動いた。岸田首相は第三者弁済案の発表から1年1カ月たった4月に米国を訪問し、上下両院合同会議で演説したが、そこでは過去の侵略戦争と植民地支配に対する反省どころか、関連の内容には一言も触れなかった。
 「歴史修正主義者」と批判された安倍元首相も、2015年4月の米国連邦議会の上下両院合同会議での演説で「戦後の日本は、先の大戦に対する痛切な反省を胸に歩みを刻んだ。自らの行いが、アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目をそむけてはならない」と言及した。当時の安倍首相は、「慰安婦」被害問題などによる批判を受けていたため、歴史問題に対する言及は避けられなかった。
 しかし岸田首相は、尹政権が日本の反省を求めないため、そのような負担から逃れることができた。岸田首相の米国訪問前に日本の時事通信は、外務省幹部が米国議会での演説文について「(過去の問題は)一段落している」と述べたと報じた。
 岸田首相は事実上退任の意向を表明した先月14日の記者会見で「来年は日韓国交正常化60年の節目の年、日韓関係の正常化をいっそう確かなものとしなければならない」と強調した。韓国が「日本の呼応と気持ち」に寄りかかって要求をしない間に、日本はこれを「日韓関係の正常化」として固定化している。
 岸田首相の退任後に誰が日本の新首相に就任しても、これは変わらない日本政府の態度となるだろう。韓国で新しい大統領が誕生し、日本政府が考える「日韓関係の正常化」を批判すれば、日本はこれを「韓国がゴールポストを動かした」と言って集中攻撃するだろう。韓日首脳の友情の代価は大きい。

チョ・ギウォン|国際部長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-09-10 07:00


「The Hankyoreh」 2024-09-09 07:19
■韓国訪問で「日本はこれ以上謝らない」再確認した岸田首相…それに同調した尹政権
 尹大統領と岸田首相、12回目の会談

 退任間近の岸田文雄首相の2日間の訪韓は、議題も内容も曖昧だった。一つ確かなのは「これ以上謝らない日本」、そしてそれに同調する尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の歴史観を再確認したことだった。
 尹大統領と岸田首相は6日、12回目で最後の首脳会談を1時間40分にわたり行い、「私は1998年に発表された日韓共同宣言を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいることを明確に申し上げた」とし、「当時、厳しい環境の下で多数の方々が大変苦しい、そして悲しい思いをされたことに胸が痛む思い」だと述べた。「金大中-小渕宣言」と呼ばれる1998年の韓日共同宣言などに含まれた日本の過去の植民地支配に対する反省と謝罪などを具体的に言及することなく、「引き継いでいることを明確に申し上げた」と「過去形」と表現し、日本首相の謝罪ではなく「個人の思い」として表現した。
 尹錫悦大統領も韓日の歴史や日本の責任について一言も触れなかった。6日、大統領府で行われた夕食会では「韓日関係を発展させていくことは、選択ではなく歴史的責務」だとしたうえで、「今後も韓日関係の将来に予測し難い難関が待ち受けるかもしれないが、揺らいではならない」と強調した。これに対し、岸田首相も「韓国のことわざにも『雨降って地固まる』というものがある」と返し、「日韓両国は両国首脳間の信頼と友情に基づき、国際社会の諸問題についてもパートナーとして積極的に連携している」と述べた。
 岸田首相の今回の訪韓は「日本はこれ以上歴史問題について謝罪しない」ことを明確にし、今後は「未来」という名で韓日・韓米日の軍事安保協力の強化に焦点を合わせようという日本の思惑を示した。ソウル大学日本研究所のナム・ギジョン教授は「岸田首相は韓日の歴史の問題について『日本は完全に終止符を打った』ことを再確認し、韓国政府はそれに同調した」と語った。
 問題は今、尹錫悦政権が強制動員問題をはじめとする過去の歴史に対する日本の責任を消し去り、親日的歴史観を強調することについて、韓国の世論が大きく悪化していることを日本も知っていることだ。このような韓日関係が持続可能ではないという不安の声も上がっている。日本の政界では、韓国の世論を変えるために、歴史問題で少しは前向きな措置を取らなければならないという声もあったが、そうなればなるほど、韓国が歴史問題に対してより多くの要求をするという反論と、現在の尹錫悦政権の支持率が低すぎていかなる措置も意味がないという見解が優勢だったという。
 ナム教授は「日本政府は今、尹錫悦政権を相手にできるだけ多くのことを引き出し、韓日軍事協力を不可逆的なものに『制度化』するため急いでいる。韓米日軍事同盟に直ちに乗り出すことはできないが、韓日物品役務相互提供協定(ACSA)の締結などを念頭に置いて進んでいるものとみられる」と分析した。もし、韓国が日本の対中国牽制に完全に同調する道に進むことになれば、朝鮮半島に対する日本の影響力が拡大し、中国とロシアの反発も大きくならざるを得ない。

【写真】尹錫悦大統領が6日、ソウル龍山(ヨンサン)の大統領室で岸田文雄首相と韓日首脳会談全体会合を行っている=大統領室通信写真記者団//ハンギョレ新聞社

 岸田首相は7日午前、ソウルを発つ前にソウル大学を訪れ、韓国と日本の在学生たちに非公開で会った。日本外務省によると、岸田首相は「次世代を担う学生と意見交換ができてうれしい」とし、「日韓交流を通じて得た学びや友人との絆は、自身の糧となり、そして未来の日韓関係の土台にもなっていくだろう」と語ったという。しかし、何人の学生たちに会ったのか、ソウル大学では誰が首相を迎えたのかが分かる写真は一枚も公開されていない。日本を研究するソウル大学の教授たちにも事前通知がなく、記者団の取材も全くなかった。世論の目を避けるような、現職日本首相の「奇妙な」ソウル大学初訪問だった。
パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力: 2024-09-08 21:10


「The Hankyoreh」 2024-09-07 12:02
■【社説】退任控えた岸田首相の「手ぶら訪問」、国民の同意のない外交は持続可能でない

 退任間近の岸田文雄首相が6日、ソウルを訪問し、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と12回目の首脳会談を行った。尹大統領は「屈辱外交」という批判を受けながらも様々な譲歩措置を取ったが、空のコップの「残り半分」を満たす誠意ある呼応措置は今回も見られなかった。自民党の「穏健派」を代表する岸田首相は就任直後、「前向きな歴史認識」を明らかにしており、韓日関係に新鮮な活力を吹き込むと期待する人も多かった。しかし、結局虚しい結論に至った。韓国政府は長期的に日本とどのような関係を築いていくのかについて根本的に考え直さなければならない。
 両首脳は同日午後に開かれた会談で、来年の国交正常化60周年を控え、両国の交流と協力を持続的に強化していくことの重要性について意見を共にした。さらに在外国民保護協力覚書を交わし、第三国で両国国民の安全を守る制度的基盤を作った。また、両国国民がより便利に相手国を行き来できるよう出入国の簡素化のような人的交流増進方案を積極的に模索することにした。意味のある成果だが、韓国の期待に添えるレベルではなかった。その後、尹大統領夫妻は岸田首相夫妻と夕食を共にした。
 両国の間に特別な懸案がないのに、退任を控えた日本首相が韓国を訪れるのは極めて異例のことだ。一部で、韓国国民の税金で岸田首相の退任パーティーを開くのかという声があがっているのもそのためだ。岸田首相は自民党を大きな危機に陥れた党内の「政治資金」問題をうまく解決できず、27日に行われる総裁選への出馬を断念せざるを得なかった。このような苦しい政治状況の中で、自身が韓日関係を劇的に改善する成果を上げたことを誇示したかったようだ。
 韓日関係が紆余曲折を経ても発展できたのは、日本が過去の歴史問題について謝罪・反省した村山談話(1995)と韓日パートナーシップ宣言(1998)の精神を堅持してきたためだ。岸田首相の虚しい退任からも分かるように、日本にはこれ以上、反省の歴史認識を期待することが難しい時代になってしまった。
 日本と尹錫悦政権はこれまで「歴史問題には目をつぶり軍事協力さえ進めれば良い」という姿勢で両国関係を改善してきた。しかし、韓国国民の支持を得られないこのようなアプローチを今後も続けることはできない。韓国政府は韓日国交正常化60周年を迎え、両国の戦略観を一致させる「新韓日共同宣言」を進めているという。政府は無理な「速度戦」をあきらめ、持続可能な両国関係を考えなければならない。国民の同意を得られない外交とは、砂上の楼閣にすぎない。
(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1157406.html韓国語原文入力:2024-09-06 21:26


「The Hankyoreh」 2024-09-07 07:31
■尹大統領と岸田首相、12回目の首脳会談…今回も歴史問題については具体的に言及せず

【写真】尹錫悦大統領が韓国を訪問した岸田文雄首相と6日午後、ソウル龍山の大統領室で韓日首脳会談を行う前に握手している=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 6日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が退任を控えた日本の岸田文雄首相と1時間40分間にわたり首脳会談を行い、来年の国交正常化60周年の意味を強調したうえ、両国関係のさらなる発展に向けて取り組むことで一致した。一方、以前の韓日首脳会談と同様に、歴史問題について具体的な言及はなかった。野党は「屈辱外交」と強く批判した。
 尹大統領は同日、ソウル龍山(ヨンサン)の大統領室で開かれた韓日首脳会談の冒頭発言で、「韓日関係には依然として難題が残っている」とする一方、「より明るい未来に向けた歩みを続けられるよう、双方が前向きな姿勢で共に取り組んでいくことを期待する。韓日、韓米日間の協力を引き続き進展させるためには、私と岸田首相が築いてきた両国協力の肯定的なモメンタムを継続していくことが重要だ」と述べた。また、「岸田首相とともに築いてきた成果は、私が大統領に就任して以来、最も意味のあることだ」と評価した。会談後に開かれた夕食会では「韓日関係を発展させていくことは、選択ではなく歴史的責務」だとしたうえで、「今後も韓日関係の将来に予測しがたい難関が待ち受けるかもしれないが、揺らいではならない」と強調した。しかし、尹大統領は「強制動員」を示す内容が抜けたまま世界文化遺産に登録された佐渡鉱山(佐渡島の金山)問題など、過去の歴史と関連した懸案には言及しなかった。
 岸田首相は「私は1998年に発表された日韓共同宣言を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいることを明確に申し上げた」とし、「当時、厳しい環境の下で多数の方々が大変苦しい、そして悲しい思いをされたことに胸が痛む思い」だと述べた。「金大中(キム・デジュン)-小渕宣言」と呼ばれる1998年の韓日共同宣言には、日本の過去の植民地支配に対する反省と謝罪が含まれているが、岸田首相は歴史問題について明確に言及する代わりに、同宣言を「受け継いでいる」と述べることにとどまった。また、昨年5月の尹大統領との首脳会談後に開いた共同記者会見と同様に、日本の首相としての謝罪ではなく「個人としての思い」を表現した。同日の夕食会では「ことわざに『雨が降って地固まる』というものがある」とし、「日韓関係に激しい雨が降ったこともあるが、尹大統領とともに歩みを進めながら、雨に濡れた道を固めてきた過程が韓日関係の新たな始まりだった。今後もたとえ意見の相違があっても、持続的に話し合い、共に知恵を出し合い、道を切り開いていきたい」とし、「未来」を強調した。
 尹大統領と岸田首相の首脳会談は今回で12回目。岸田首相は今月27日に開かれる自民党総裁選挙に不出馬を宣言し、退任まで1カ月を切った状況であり、今回の会談で大きな成果は出せないという見通しが多かった。
 野党は「今回の首脳会談は岸田首相に対する退任祝い」だと批判した。共に民主党のノ・ジョンミョン院内報道担当は書面ブリーフィングで、「岸田首相は曖昧な立場表明で歴史問題に対する謝罪と反省を済ませており、尹大統領から屈辱的外交を確約された。尹錫悦政権が数多くのものを差し出したうえで得られたのは、日本の称賛と岸田首相とのブロマンス(男たちの熱い友情)だけ」だとし、このように主張した。強制動員被害者に対する第三者弁済、福島原発汚染水の海洋放出、佐渡鉱山の世界文化遺産登録などが「一方的な譲歩」の内容だと批判したのだ。祖国革新党のキム・ジュンヒョン外交安保特別委員長も論評を出し、「これが尹大統領と与党が主張してきた未来指向的な韓日関係なのか」とし、「(今回の会談は)歴史歪曲の主犯と共犯の会合」だと酷評した。
 これに対し、大統領室高官は「佐渡鉱山の世界文化遺産登録は、激しい協議と合意を通じてすでに7月に一段落したため、首脳会談では言及しなかった」と述べた。大統領室はその代わり、日本政府が1945年に爆発で沈没した浮島丸の乗船者名簿を韓国政府に提供することにしたことについて、「犠牲者に慰労金を支給できる法的な手続きが再開される可能性が開かれた」と高く評価した。
 一方、同日の会談で両首脳は北朝鮮の挑発と朝ロ密着に対応した韓日および韓米日の連携と協力を強化することで一致した。また今回の会談を機に、第三国で危機が発生した場合、両国が自国民の撤収支援・協力について協議する在外国民保護協力覚書を交わした。さらに、韓日間の事前入国審査制度を進めることにした。
チャン・ナレ、キ・ミンド記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-09-06 22:41


「The Hankyoreh」 2024-09-05 09:57
■韓国の元統一部長官「尹錫悦政権の北朝鮮崩壊論は滑稽な主張」

【写真】イ・ジョンソク元統一部長官=イ・ジェフン記者//ハンギョレ新聞社

 「2012年の金正恩(キム・ジョンウン)委員長就任以来、今回が3度目の大型洪水被害復旧作業だ。今回は国家資源が以前より体系的に復旧作業に動員されている印象を受けた。朝中国境の大都市と農村の再開発事業も途切れることなく続いている」
 イ・ジョンソク元統一部長官が8月下旬、北朝鮮と中国の間の1334キロメートルにわたる国境地域を視察した後、ハンギョレに示した暫定的な結論だ。イ元長官は2023年9月下旬にも国境地域を視察しており、この11カ月の変化と継続を踏まえた意見だ。イ前長官は「新義州(シンウィジュ)と恵山(ヘサン)などの物流の増加傾向は朝中貿易が以前より活発になっていることを示している」とし、「水害復旧と農村の住宅建設は、国境地域全般で観察される現象」だと説明した。それとともに「かなりの資源の動員が必要であり、北朝鮮当局の危機管理能力と行政遂行能力が向上したと思われる」とし、「今、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権を含む一部の北朝鮮崩壊論は滑稽な主張だ」と力を入れて語った。
 イ元長官は1996年から、公職に就いている時を除いて1年に1、2回、朝中国境地域を視察してきた国境踏査の開拓者であり生き証人だ。国境での観察と時系列の比較分析は、2018年12月以後、南北当局対話が途絶え民間の訪朝さえ不可能になった状況で、事実上唯一残された「北朝鮮の実情をうかがえる」方法だ。
 「北朝鮮崩壊論は叶うことのない希望という名の拷問」だと語ったイ元長官は、このような説明を付け加えた。「(尹錫悦)政府の北朝鮮政策は、北朝鮮体制が弱体化しており充分倒せるという主観的な信念に基づいている。そのような認識は数十年間、現実となっていない。そのうえ、北朝鮮はロシアと軍事同盟を復元し、朝中関係も微妙な局面ではあるが、もう少し拡大する可能性がある。この30年余りの脱冷戦の歴史の中で、北朝鮮は今が経済と外交安全保障の面で最も良い戦略的環境にある」
 イ元長官の自宅には、義父が書いてくれた「実事求是」(事実に基づいて真理を求めること)の扁額が飾られている。イ元長官が研究者としてはもちろん、公職にいる時も決して忘れず心に刻んでいたことだ。「事実」に基づかない生半可な判断はしないという態度だ。「今の北朝鮮崩壊論は滑稽な主張」という意見も、長い間続けてきた境界地域の視察から得た「多くの事実」に支えられている。
 イ元長官が11カ月ぶりの朝中国境地域訪問で何よりも細心の注意を払ったのは、鴨緑江(アムノッカン)沿いの水害規模と復旧作業▽都市建設と農村住宅改良の幅と速度▽朝中交易・交流の行方の3つだ。
 「金正恩体制」については「昨年に比べて今年は国家主導の開発と発展がある程度進んでいる印象を受けており、全体的に不安定な姿は見られなかった」と語った。スピードが速いわけではないが、「右肩上がり」の傾向にあるという。例えば「北側で最も奥地である鴨緑江上流の両江道の農村再開発事業は、昨年には5カ所に1カ所の割合だったが、今年は少なくとも半分または5カ所に3カ所の割合で観察された」とし、「約3~4年後には国境地域の農村の姿が完全に変わる可能性がある」と予想を示した。

イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力: 2024-09-04 08:48
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