私が広告業界に入った頃、サントリーがこんなCMを流していました。
雁は北から渡ってくるとき木の枝をくわえて飛び、疲れるとその枝を海に浮かべて止まって休む。青森県外ケ浜まで来ると、枝を捨ててさらに南へ渡る。そして、春になると再びその枝をくわえて北へ帰る。しかし、帰れなかった雁も多く、浜にはたくさんの枝が残る。この地方の人はその枝を集めて風呂を焚き、帰れなかった雁を供養する。
これが「雁風呂」の伝説。落語にもこの話があるそうで、「雁風呂」は春の季語にもなっています。
せつなさが漂う日本人好みの話ですが、バードウォッチャーでなくても、雁が木の枝をくわえて飛ぶことはありえないと分かるでしょう。全くの作り話で、青森県の人たちも「そんな説は聞いたことがない」と言っているそうです。
湖北で撮影したマガン
この話の出所は江戸時代の『採薬使記』という書物。「(前半略)他国にて多くの人の為に捕れたる雁の供養なる由、毎春の例とせり、これを俗に外ケ浜の雁風呂湯という」。
同じ書物に、これによく似た中国の話が載っているので、それをベースに作者が創作したのではないでしょうか。
ということは、サントリーのCMもその作り話に乗せられて、もっともらしくでっち上げたということになります。青森県のある公的機関のWebサイトによると、このCMが流れて以降、現地の人たちは観光客に「雁風呂」のことを聞かれて困ったそうです。
私もこの業界で長年仕事をしていますが、広告は時々こういう罪作りなことをしますね~。
サントリー宣伝部出身の作家・開高健の本もよく読みました。このTVCMに出ているのも、同じく宣伝部出身の作家・山口瞳だと思います。
この「雁風呂」のことを調べるうちに、そのサントリーのCMの虚構に気づいて、ちょっと落胆しました。
サミー・デイビス・JRは確かホワイトのCMでしたね。
ガンもそろそろ北へ帰る季節ですね。
次回もこのガンの話です。
このCMは知りませんでした。
7歳なので、私は両親がテレビが好きでよく見ていたので覚えていてもよさそうかなと思いましたが、興味の対象が違ったのでしょうね。
だから「雁風呂」という言葉自体を知りませんでした。
でもサントリーでは、サミー・デイヴィス・JrのCMはよく覚えています(笑)。
ガンはあと4週間くらいでこちらに帰って来ると思われ、今年は見に行きたいです。