樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

若山牧水

2022年10月13日 | 野鳥
白鳥(しらとり)は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよう
確か高校の教科書だったと思いますが、この短歌が強く記憶に残っています。小さな鳥と大きな空や海、その青と鳥の白、その対比によって情景がくっきりと目に浮ぶからです。詠んだのは若山牧水(1885-1928)。
この「白い鳥」を何と見るかによって歌の世界が変わってきます。「哀しからずや」という心情を投影できるのは、ハクチョウのような大きな鳥ではなくカモメかアジサシでしょう。私のイメージに近い映像は以下。


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牧水は鳥の歌を数多く残していて、短歌9000首のうち800首が鳥の歌といわれています。日本野鳥の会の創設者・中西悟堂とも親交があり、悟堂は「あれほど野生の小鳥に関心を持ち、旅と共に小鳥に愛着を寄せ、またその作も多かった牧水」と書いています。
くれないの 胸毛を見せて うちつけに 啼(な)くきつつきの 声のさびしさ
これはアカゲラでしょうかオオアカゲラでしょうか。「声のさびしさ」から想像するとアカゲラのようです。
当ブログで若山牧水を取り上げるのは3回目。実は、牧水はバードウォッチャーであると同時にツリーウォッチャーでもあったようで、樹をテーマにした作品もたくさん作り、『かなしき樹木』という詩集や『樹木とその葉』というエッセイ集を出版しています。詳細は8年前の記事「樹を愛した歌人」をご覧ください。


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地元の景勝地で樹木伐採計画が浮上した際、反対運動の先頭に立って新聞などに投稿し、計画を中止に追い込んでもいます。その功績を称えて、その地には牧水の歌碑が立っているそうです。
同じく鳥と樹が好きな私は親近感を覚えます。
コメント (2)
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