樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

イヌワシになりたかった作家

2018年04月26日 | 野鳥
1966年に『夏の流れ』という作品で芥川賞を受賞した丸山健二はその後も多数の作品を発表しますが、なぜかイヌワシに強い執着を示します。『イヌワシのように』という小説や『イヌワシ讃歌』というエッセイ集を発表するほど。
また、出身地・長野県に新設された高校から校歌の作詞を依頼され、『イヌワシの歌』を書いています。さらに、イヌワシに近づくためにハングライダーに挑戦。そのことについて、「イヌワシに一歩近づけるというのだから、もしそれで命を落とすようなことがあったとしても、私はかまわなかった」と書いています。


イヌワシ(Public Domain)

しかし、丸山が実際にイヌワシを見たのは1度だけ。「私が好きなのは要するにイヌワシの雰囲気だ。北アルプスのどこかに、きょうもまたたった一羽で悠々と飛んでいることが感じられるだけで、満足なのだ」。また、「群れない人生」というエッセイには次のように書いています。
「できることなら、あのイヌワシのように生きてみたいと思う。イヌワシのように生きる資格の一つとしては、おれはまず第一に決して群れないことをあげたい。周囲を見まわしてみるがいい。群れている人間ばかりが目につくじゃないか。カラス人間やスズメ人間ばかりじゃないか。ひとりでは呼吸もできない連中が、その必要もないのに、互いに軽蔑しあいながらいたるところに群れているじゃないか」。
上記の校歌にも「群れることはない 諂(へつら)うことはない」という一節があります。“孤高の作家”と呼ばれる丸山健二らしい姿勢です。
コメント (6)
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