樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

撮る楽しさ < 探す面白さ < 感じる喜び

2017年08月31日 | 野鳥
3日に1度くらいの頻度で近くの干拓地にシギ観察に出かけています。もうすっかり回復したので、三脚を担いで動画も撮影しています。
今の時期、この干拓地には大阪や奈良からもフォトグラファーが集まります。その被写体はツバメチドリ。私が行く頃にはすでにカメラが10~20台並んでいるので、鳥を探さなくても、人だかりを探せばツバメチドリが見られます。
私も加わって撮りますが、支部のウェブメディア用に2~3カット撮ってすぐに移動します。珍しい鳥を自分のカメラに収めるという楽しさはありますが、それだけのこと。人だかりを頼りに撮ったり、餌付けして撮影するのは、動物園へ行ってイヌワシを撮るのと大差ないと思うからです。



ツバメチドリのポイントを離れ、別の休耕田を10カ所ほど回りながら少し遠くのエリアに行くと、オグロシギが優雅な姿で採餌していました。今季、最も大きなシギとの出会いです。
こういうのが鳥を探す面白さ。自分の知識や経験に照らし合わせてあちこち探し、ようやく予想どおりの(あるいは予想外の)野鳥に遭遇する…。それは、宝さがしのワクワク感に似ています。私には「撮る楽しさ」よりも、この「探す面白さ」の方が大きいです。



オグロシギを撮っていると、フォトグラファーの車が2台寄ってきたので、そうそうに立ち去りました。
その後、さらに休耕田を10カ所ほど回って、「ここもダメかな?」と思いながらたどりついた湿地にトウネンが2羽いました。小さな鳥ですが、私の前5mくらいの距離で一心不乱に餌を食べています。双眼鏡で羽根1枚1枚がしっかり見えるくらい。しかも、私のほかに誰もいません。



干拓地という人工的な自然環境とはいえ、その中で野鳥たちが健気に生きている姿を眺めていると、自分自身がその場に溶け込むような感覚に陥ります。そこにあるのは、鳥と私と自然だけ。妙な表現ですが、皮膚が溶けて、その場と自分の境界がなくなるような感覚です。
手垢にまみれた言葉ですが、これが“自然との一体感”でしょうか。私にとって野鳥観察の最も大きな喜びは、この感覚にひたれることです。
顔も腕も真っ黒に日焼けしましたが、至福のひとときが過ごせました。
コメント (3)
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