樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

夫は鳥類学者、妻は総理大臣

2017年08月03日 | 野鳥
6月末に緊急入院したためにブログが更新できず、申し訳ありませんでした。7月末に退院しましたので再開します。

さて、鳥類学者を主人公にした小説があるというので、図書館で借りてきました。『総理の夫』というタイトルどおり、妻が日本初の女性総理大臣という面白い設定です。作者は原田マハ。鳥類研究所に勤務する38歳の鳥類学者が、妻が総理大臣になる過程を日記スタイルで書き綴るという内容です。主人公の日常は次のようなもの。



(毎朝5時に起きて)実家周辺をこんもりと取り巻く森を訪れる野鳥たちの姿を双眼鏡で追いかけ、種別を確認、右手に握りしめたカウンターですばやく個体数を数える。デスクの片隅に置かれた「野鳥観察ノート」に観察結果を書き込む。それから、冷めたコーヒーの残りを、おもむろに啜る。一日のうちで、いちばん充実した時間だ。

研究所の所長はオオタカが、同僚はアホウドリが、本人はタンチョウが専門という設定です。また、連立を組む最大与党の党首が弱小与党の党首(妻)を総理に担ぎ上げたことを、カッコウのオオヨシキリへの托卵に例えるなど、それなりにリサーチをした上で書いています。
ただし、以前ご紹介した『鳥と砂漠と湖と』と違って、著者自身がバーダーではないために所々に「?」と思うような記述があります。
例えば、後に妻となる女性との初デートとして明治神宮で野鳥を観察する場面。最初にルリビタキがスコープに入り、その後キビタキのペアが現れます。時期は5月なので、ルリビタキではなくオオルリの間違いでしょう。
また、「あれはカワラヒワのメスですね」と説明するシーンもありますが、初めて鳥を見る相手にほぼ雌雄同色のカワラヒワの性別まで説明しないでしょう。
作者の原田さんはネットのインタビュー記事で次のように語っています。

日和(主人公)を浮世離れした鳥類研究家にしたのは自分が鳥が好きだからです。文中に出てくるコンラート・ローレンツの著作は昔から何度も読み返しています。鳥類研究家というのは夢のある仕事ですからね。

ストーリー展開にはちょっと幼稚な部分もあり、政治に関する現実認識が甘いところがありますが、それなりに楽しめました。
コメント (8)
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