
錠前は「扉などに取り付けてしまりとする金具。鍵を用いて開閉する(広辞苑)」。別の説明には「錠」と「鍵」の二つが組みの状態で一式になった状態を錠前(ロックセット)、とある。子どもの時から定年5年前まで、我が家の防犯に寄与したのは錠前だった。それは旧制岩国中学武道場の木製窓のそれに似ている。
ここでの錠前は、引き違いの戸で枠が重なる位置に取り付け、両方に通じる穴に内側から外側の戸を固定する棒状の芯を通す方式、最近は引戸錠と呼ぶそうだ。今はサッシ枠に少なくとも2個の錠が付いている。穴に通して回して閉める戸は無いだろうし、防犯上からも安心できない。
そんな錠前が、窓も部屋や廊下の扉、玄関の戸の中ほどに1個画取りつけてあった。出かけるとき「閉めたか」という確認はこの錠前のことを指していた。子どもでも簡単に開け閉め出来るものにどれほどの防犯効果があったのか、今では疑問に思うが、深く考えた覚えは無い。治安が良くそれほど心配しなくても過ごせた証かもしれない。
武道場で見かけた木製窓枠の錠を回すところに「TOK」の刻印がしっかり読み取れる。窓枠との一体感は長年の苦節に耐えた仲間のようで、重厚さを醸し出している。現代の花形IC錠など何するものと頑張っている。「錠をおろす」という慣用句がある。これはしっかり錠が開かないようにすることで大切なこと。加齢でより頑固になり「心に錠をおろす」ことのないよう気をつけなければと言い聞かす。