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猪瀬直樹『東條英機 処刑の日』

2012年12月22日 17時06分50秒 | 文学
猪瀬直樹『東條英機 処刑の日 アメリカが天皇明仁に刻んだ「死の暗号」』(文春文庫)を読んだ。
タイトルが長くてそれですべて語っている感じだ。
ちょうど明日が天皇誕生日なのだけれど、その日は東條英機が処刑された日で、それはGHQが意図して合わせたものだろうという小説だった。
ノンフィクションとフィクションの部分があまりうまく混ざっていない感じで、猪瀬直樹を思わせる語り手がある女性から相談を受けて彼女の祖母の日記を読み解くというフィクションの部分が嘘くさくて、なんでこんな形式にしたのかな、と思った。『ピカレスク』でよく読みこんだであろう、太宰治の『斜陽』とか井伏鱒二の『黒い雨』みたいなものを書きたかったのかもしれない。
タバコを吸いながらホテルの喫茶店で待ち合わせて女性に逢うという雰囲気は太宰治でも井伏鱒二でもなく、村上龍に近い感じだった。
しかし村上龍であれば出会った女性と肉体関係に発展するだろうが、猪瀬直樹はそんな話にはならなかった。たぶん、ノンフィクション作家なので事実に拘るということがあるのだろう。自分と目される人物に恥ずかしいことをさせることができない。

ノンフィクションの部分では東條英機の自殺未遂についていままでの印象とは違った書き方をしていた。
半藤一利の話では東條英機は死ぬ気がなかったような印象だったが、猪瀬直樹では東條英機はほんとうにピストルで自殺するつもりだったという書き方だった。これは当時の雰囲気を知る半藤一利のほうがそのときの印象につられて、間違っているのだろうなと思った。
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